マスク・手洗い・ワクチン接種で感染を防げ

 人間が初めて遭遇した新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)。抵抗力がなく多くの人が感染するなど社会に大きな影響を与え、収束のめどはまだ立っていません。感染予防のマスク着用や手洗いが日常生活に定着する中、新型コロナ感染拡大の現状やワクチン接種、予防法について、感染症の専門家・佐賀大学医学部の青木洋介教授に聞きました。

 

「人的因子」「環境因子」「ウイルス因子」が重なり第3波

 新型コロナの感染者数は昨年夏、第2波と呼ばれる山が来て、秋ごろ落ち着きかけたものの冬場に再び増加し、第3波と言われています。ひと波ごとに感染者数が増えています。
 原因は分からないことが多いですが、考えられるのは、まず「人々の注意の緩み」。人の注意は長続きしにくいですから、緊急事態宣言が出された昨年のゴールデンウイークごろの注意深さに比べると、今の状況に慣れてさほど不安を感じなくなっています。
 次に「PCR検査数の増加」です。全国で検査体制が拡充したので、検査が数多くできるようになりました。検査数が増えたことで、見つかる感染者の数も増えたという可能性があります。
 三つ目は「気候」。梅雨や夏など湿気が多い季節は、咳などでウイルスが空中に出ると、すぐに水分が付着して重くなり、遠くに飛びにくくなります。しかし、冬は空気が乾燥し、ウイルスを取り巻く水分は少なく、ふわふわと遠くまで飛びやすくなります。これで伝播する範囲が広がります。また、「ウイルスが変異」して感染力が強くなった可能性もあります。
 こういった「人の因子」、「環境の因子」「ウイルスの因子」が重なり、増加につながったと考えられます。
 佐賀の場合、人口が少なく、混雑した中での人の行き来はほとんどないので、都会のような感染の広がり方はしないと予測されます。最近の感染者を見ても、県全体で広がっているわけではなく、感染源がある程度はっきりしている局所的な感染です。数字だけ見ると増えたと感じても、どう増えたのかしっかり中身を見極めようとすることも大切です。

過度に恐れないで

 最近「新型コロナの変異ウイルスが見つかった」と聞いて不安を感じる人も多いようです。ウイルスは自分のコピーを作って2倍、4倍、8倍と増えていきます。途中、ランダムに起きる遺伝子のエラーが修復できずにそのまま残って増えるのが「変異株」です。実は風邪も毎年変異しています。新型コロナはもともと風邪の一種ですから、同じように変異は起こります。メディアでは「イギリスに行ったこともないのに」というふうに報道されるので、一般の人は「得体の知れない恐ろしいもの」と不安をかき立てられますが、イギリスに行き来しなくても、国内でもイギリス変異株と同じようにウイルスが変異することはあり得ることです。
 新型コロナは感染症の専門家にも分からないことも多いのです。メディアの報道と一般社会の心理の掛け合いで、不安が増幅されているのではないかと感じています。これも間接的な新型コロナの影響と言えるかもしれませんが、過度に恐れ過ぎない、冷静な視点も重要です。

新型コロナ感染予防にワクチン接種を

 新型コロナワクチンの接種が始まりました。昨年から感染が拡大し、外出自粛、飲食店の時短営業など試行錯誤しながらいろんな対策を取ってきた結果、まだ抑えられていないのが現状です。しかし、これ以上、人が行動抑制を強めるのは容易ではないと思います。そこで、次に頼るとすれば、ワクチン接種です。厚生労働省が重大な副反応の心配はないとしていますし、私の考えも同様です。ぜひ多くの人にワクチン接種を受けてほしいと思っています。ワクチンは無料で、2回接種します。
 ワクチン接種でどのくらいの効果があるのか、抗体がどのくらい継続するのかなど確認していく必要はありますが、抗体ができれば今後、第4、第5の増加の波が来ても、小さな波に留まることも期待できます。

個人ができる感染拡大予防

 佐賀県では病床などの確保がしっかり行われていて、医療体制がひっ迫した状況ではありません。感染した場合、自宅待機することはなく、入院もしくはホテルで治療や養生をする環境が整っています。
 感染拡大を防ぐために大事なのは「手洗い」と「マスク着用」に変わりはありません。3密を避け、お互いにマスクをしていれば、簡単に感染はしないと思います。
 今後も感染予防に努めながら、普段の生活を送ってください。不特定多数が行き交う社会的な環境に入る時には「人のために」、そこから自宅に戻る時には「自分と家族のために」ウイルスを持ち込まないようにする意識が大事です。

▶︎間違った情報に振り回されないために―お薦め本

 

『今日からできる! 暮らしの感染対策バイブル』
   監修・堀成美/発行・主婦の友社(定価:1540円)
一般の方の新型コロナなどの感染症に対する不安に、感染症対策の専門家が分かりやすく答えてくれる本です。

 

手洗い・マスク着用時の注意事項

●手洗い

 

 アルコール消毒液で手指を消毒する場合、乾いた手のひらを器のようにすぼめて、たっぷりと消毒液を取り、両手の手のひらにまんべんなく広げます。手の甲や指先、手の間、親指の付け根、手首まですり込みます。すり込む目安の時間は約30秒。消毒液はアルコール度50%以上含まれているものを選びましょう。通常の手洗いもアルコール消毒と同じ手順です。石けんを手に取り両手をすり合わせて泡を作り、手の甲などまんべんなくすり込み洗いします。

●マスク
 不織布で作られたマスクは撥水性があるので、外からの飛沫を防ぐ効果がありますが、布マスクは水分を吸収してしまうため、外からの飛沫を防ぐという意味では不織布マスクに比べて効果がやや下がります。使用したマスクをファスナー付きのビニール袋で保存するのは雑菌の繁殖につながるので避けます。
 

▼正しいアルコール消毒、手洗いの方法は「佐賀大学医学部」のホームページに動画で詳しく紹介しています>動画はこちら

▼新型コロナウイルス関連の情報は佐賀県のホームページから>HPはこちら

 

 

佐賀大学医学部医学科
国際医療学講座主任教授(国際医療・臨床感染症学分野)
佐賀大学附属病院感染制御部長

青木洋介氏

あおき・ようすけ 1984年、福岡大学医学部卒後、佐賀医科大学(当時)、米国スタンフォード大学などを経て97年、佐賀医科大学へ。2003年、佐賀大学医学部準教授、07年から佐賀大学医学部附属病院感染制御部部長。11年から現職。

このエントリーをはてなブックマークに追加