新型コロナウイルスの世界的な感染収束が見通せない中、東京五輪・パラリンピックに海外からの一般観客を受け入れないことが決まった。

 政府、東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会の代表による5者協議は安全で安心な大会を実現するためにはやむを得ないと、正式に合意した。

 五輪には206の国と地域から選手が参加する。選手の家族や友人、熱心なファンは大会開催都市に足を運び、観客席で声援を送り、開催国の市民と競技場の周辺で、そして街角で小さな交流の輪をいくつも築く。

 五輪ならではの喜びにあふれた国際的なにぎわいを感じ取ることができなくなるのは残念だ。しかし、楽しい日常が失われた世界の現実を直視すれば、私たちも決定を受け入れざるを得ない。

 組織委の橋本聖子会長は時代にふさわしい方法で、人々をつなぐことができるよう具体的な検討を進めると語った。

 オンライン会議の技術などを想定し、楽しさと温かい気持ちをやりとりする交流の場をデジタル空間につくり出せないか、研究するとの意味だろう。五輪の理想は持ち続けたいとの意思表明とも受け取れる。

 大会に対する海外の期待と熱が冷めることがないよう、知恵を絞り、精いっぱいの努力を続けてほしい。

 海外在住の外国籍ボランティアについて、組織委は原則的に受け入れを断念すると発表した。しかし、一部の大会運営に不可欠なボランティアについては特別措置を講じて受け入れる方向で検討するという。

 そうした経験豊かなボランティアは必要だとの認識が当事者間で共有されたのだろう。日本在住のボランティアと共に頑張ってほしい。

 東京都など競技会場を抱える自治体は、空港や鉄道のターミナル駅などで、海外からの観客にきめ細かな案内をすることを主な目的とした都市ボランティアを確保している。当然、この計画も見直すことになるだろう。内定している人は気の毒だが、活動を諦めなければならないケースも出るのではないか。

 海外での一般向けチケットは63万枚が販売された。すぐに払い戻しの作業が始まる。各国の旅行代理店などが扱ったチケットには、組織委の責任が及ばない宿泊や日本国内の観光旅行とセットになっているものもある。

 キャンセルに伴う混乱が広がることを抑えるためにも、組織委は側面から支援できるものがあれば、できる範囲で情報を提供すべきだ。

 次に待ち受ける大きな課題は、日本の観客について競技場の収容人員の何パーセントまで認めるかの決定だ。政府のイベント制限の方針に沿ったものになり、現時点では50%とする案を軸に検討されている。

 4月中に再度5者協議を開いて上限を決め、ワクチンの接種が進むなどして国内の感染状況が改善すれば、5月か6月に50%以上に緩和する可能性もあるという。合理的な手続きではある。

 しかし、全ては日本全体、中でも首都圏での感染状況が今後どのように推移するかにかかっている。緊急事態宣言の解除で多くの市民が気を緩め、感染が拡大すれば、観客規模は逆に50%未満に制限されるかもしれない。市民の決意が試される。(共同通信・竹内浩)

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