「かかしはカラスを怖がらせていると思うかい?」「もちろんそうだ」「ところが違うんだ。カラスはかかしをバカにして笑ってるんだ」。往年の名画「スケアクロウ」でアル・パチーノとジーン・ハックマンが語り合う。生ごみ収集日の朝、電柱の上で鼻をきかせているカラスを見かけるたび、このせりふを思い出す。あぁ憎らしい◆県庁周辺は冬の間、カラスの大群の「ふん害」に悩まされている。この身近な厄介者の生態はしかし、よく分かっていない。市街地でごみをあさるカラスの群れに、越冬のため大陸から渡ってきたミヤマガラスが合流し、巨大なねぐらを作っているらしい。突き止めたのは佐賀大農学部の徳田誠准教授である◆彼らにカラスが天敵に狙われたときの鳴き声を聞かせ、強力なLEDライトを当てて追い払う実験を熊本市の繁華街で行った。ホラー映画を毎晩見せられるような恐怖に、わずか数日で大群はねぐらを郊外に移したという◆「いま人とカラスの距離が近づきすぎている」と徳田准教授は指摘する。稲刈りの機械化でミヤマガラスがエサにする落ち穂は増えた。ねぐらに帰れば市街地の夜は明るく、外敵に襲われる心配がない。皮肉にも、人間の技術の進歩がカラスたちに居心地の良さを提供している◆映画のせりふをまた思い出す。「オレたちはかかしだな」(桑)

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