医学用語は、昔と比べるとずいぶんと世間に認識されることが多くなっているのですが、それでも今でも誤解された表現が一人歩きすることも多いものです。最近ですと「変異株」を正しく使うように呼び掛けられたことは記憶に新しいですね。

 さて、「排尿後も尿が全部出たというすっきりした感覚がなく、いつまでも排尿を終わらせることができないような感覚」ことを「残尿感」というのですが、患者さんの話を聞いていると、しばしば「尿はすっきり出て残った感じはないが、10分もするとまたトイレに行きたくなる」といった症状を残尿感と表現する方が少なくありません。その背景には「10分しか経っていないのにまたトイレに行きたくなるのはおしっこを全部出し切れていないからだ。つまり残尿(排尿後に膀胱や尿道に残ったおしっこ)があるからだ」という考え方があります。しかし、この場合は「10分おきにトイレに行きたくなる」ことが問題なので、医療者に正確に伝えるには「頻尿」と訴えるのがよいでしょう。

 このような用語(メディカルターム)の誤解がコミュニケーションを難しくしてしまうことはしばしばあります。もしあなたが、訴えをよく理解してもらえていないと感じたときは、あえてメディカルタームを使わず、ありのままの症状を話してみるのもひとつの解決手段になるかもしれません。

 ちなみに、「残尿感がある」と訴える方の多くは、実際には残尿がありません。残尿感とはあくまでも「残った感覚」の問題で、尿が全部出てしまっているにも関わらず、ぼうこうが炎症や結石などの刺激で尿がまだ溜まっていると認識することにより生じる症状なのです。逆に実際に残尿がたくさん溜まっている方は、自分ではそれを認識できないことが多いものです。ご存知でしたか?

(なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)

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