政府は首都圏4都県に出していた新型コロナウイルス緊急事態宣言を21日までで解除すると決めた。新規感染者数は横ばい、微増のままだが、宣言発令による対策は効果が薄れているとして、医療提供体制の改善を主な根拠に踏み切った。

 例えるなら、入院治療ではこれ以上良くならないとして退院させるような判断だ。感染力の強い変異ウイルスが日々拡大し、対策強化が急がれる今の局面で宣言解除は大丈夫なのか。政府は判断経緯の説明に加え、解除後に有効な対策の早期確立へ手を尽くすべきだ。

 4都県のコロナ患者用の病床使用率は埼玉、千葉が30%台後半、東京、神奈川が20%台半ばと全てステージ4(爆発的感染拡大)相当の50%を割り、ステージ3(感染急増)に下がった。しかし1週間ごとの感染者数比は埼玉、東京が1超と微増でなおステージ3~4だ。東京の新規感染者数は再びステージ3に迫り、既にリバウンドが始まっているとも指摘される。

 菅義偉首相は4都県で宣言を再延長した際には、各指標がステージ3に収まっているだけでなく「ベクトルが下に行くことが大事」とさらに下降の局面にあることが解除の条件との見解を示した。ところが今回は感染者数微増でも「数字が解除の方向に入っている」と逆の判断をした。一貫性を欠き、基準が恣意(しい)的だと言わざるを得ない。

 そして変異ウイルスは全国に拡大中で確認例は空港検疫も含めれば計500人に迫る。変異株は強い感染力に加え、一部ワクチンの効果が弱まる懸念も指摘される。

 中でも心配なのは、宣言が先行解除された大阪や兵庫で報告数が多いことだ。神戸市の調査では3月初めごろで感染者の4割近くが変異株だった。因果関係は不明だが、近畿3府県は1週間ごとの感染者数比が宣言解除後に増加に転じ、いずれも1を超え、京都は2台後半と増え方が顕著だ。

 感染者が増えれば、せっかく改善した医療体制も再び逼迫(ひっぱく)する可能性が高まる。近畿の現状もきちんと踏まえ、対策を強化していく必要がある。

 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長も「今までの延長」の対策では不十分との立場だ。感染源やクラスター(感染者集団)発生場所が分からないケースが増えたため、飲食の場に絞った従来の対策では限界に来ているという重い指摘だ。

 今後の対策は(1)無症状者へのモニター調査強化で感染再拡大の予兆をより早くつかむ(2)変異ウイルスに備え医療提供体制を拡充(3)ワクチン接種の普及速度を上げる―などが特に重要になる。問題は卒業、入学、就職など春のイベントが多い時期に宣言を解除してこれらの効果が追いつくかだ。

 東京大の研究チームは、宣言解除後に歓送迎会などが増えれば、経済活動再開が慎重でも6月には東京の新規感染者数が1200人を超え、また発令があり得るレベルに戻るとの試算を公表した。規模に大小はあれ、今後も感染の波は必ず来る。その備えは不可欠だ。

 「延長しても感染を防げないなら解除しかない」(政府関係者)と言うが、菅政権は当初1カ月の宣言を2度にわたり1カ月半延長しても、飲食中心の対策に大きな追加、変更をしなかった。そもそも宣言中の対策に不足、不備はなかったのか。その検証、反省を第4波対策の土台とすべきだ。(共同通信・古口健二)

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