2007年秋、中日対日本ハムのプロ野球日本シリーズ第5戦。中日の山井大介投手は8回を終わって1人の走者も出さず、日本シリーズ史上初の完全試合へ期待が高まった。だが、中日の落合博満(ひろみつ)監督は9回のマウンドに抑えの切り札岩瀬仁紀(ひとき)投手を迷わず送る。岩瀬投手は三者凡退で締め、中日は53年ぶりの日本一を手にした◆当時、落合監督の起用法に賛否が分かれた。チームの勝利は大事だが、大記録に挑戦させたいと、個人的にも思った。組織の規模にかかわらず、リーダーは孤独である。落合監督が批判を浴びたように、揺るがぬ信念が理解されない時はある。だが、満場一致の決定が必ずしもいい方向に進むとも限らない◆きのう、首都圏への緊急事態宣言が21日で解除されることが決まった。菅首相の判断が優先された格好だ。賛否両論ある中で、最後は国のトップが決断すべき問題だろう◆落合監督は後日、「監督というものは全員が乗った船を目指す港に到着させなければいけない。誰か一人のためにその船を沈めるわけにはいかない」と語っていた。判断理由を自分の言葉できちんと説明できれば周囲も納得する。普段からの信頼関係も大切だろう◆気がつけば、菅内閣の発足から半年が過ぎた。視界不良の中で船が進む今、乗り組むみんなでもう一度力を合わせるしかない。(義)

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