「人のつながりで、地域を地域で守っていることがこの集落の素晴らしいところ」と話す髙岡盛志郎さん、博子さん夫妻=有田町下内野の「TIMERの宿」

のどかな風景の中に立つ民泊「TIMERの宿」。地域の人とのつながりを感じながら暮らしている=有田町下内野

 緑に囲まれた有田町下内野にある一日一組限定の民泊「TIMER(タイマー)の宿」。コンセントがなく、自然エネルギーを使った宿を営むのは、佐賀市から子ども2人と移住してきた髙岡盛志郎さん(43)、博子さん(43)夫妻。近くで開くオーガニックファーマーズマーケットも人気を集め、自転車で地域をめぐって野菜や野草を収穫する体験ツアーにも携わっている。

 移住のきっかけは博子さん。「アスファルトより土」。電気を極力使わず、自然に負荷をかけない暮らしを望んだ。風情ある無人駅、電線が見えないなど10の条件に当てはまる場所を探し、有田町にたどり着いた。盛志郎さんも賛同、レストランを畳み移住した。

 自宅兼宿となる場所は当初、雑木林状態で形状もよく分からなかった。決め手となったのは、紹介してくれた人の「こんな素晴らしい場所はない」という言葉。「地元の人が地元を好きなことにぐっときた」(博子さん)と振り返る。

 近くの複合施設で開くオーガニックファーマーズマーケットは人気を集め、奇数月の第3日曜に回数を増やした。「カリフォルニアでの料理人時代に見て、やりたいと思っていたが、周りを見たら有機栽培の農家が割といた」と盛志郎さん。「街よりも自然の中の方が説得力がある」と、採れた土地で開く意義も感じた。

 2人が抱いた地域の印象は「人が優しい」「ちょうどいい」。マーケットの来場者が増えて駐車場がさらに必要になると、住民が協力してくれた。自転車で行ける範囲で必要なものがそろうことが「ちょうどいい」につながっている。

 荒れた農道があれば、皆で石積みから修復する。人のつながりで「地域を地域で守ろう」というのが、この地域の強みだと感じている。「農業も焼き物もゼロから物をつくり出していることが、有田の魅力。自然のもの同士、親和性があるから、つながれると思う」

 「都会にあるようなものではなく、土地を感じられるものの方が有田には合う。例えば、おしゃれな陶磁器店を田んぼの真ん中に造るとか」。あるものを生かした、陶と農の融合。盛志郎さんは、眼前の水田を見ながら笑顔を見せた。

 人のつながりに支えられて「自分たちのやりたいことがやれている」という有田暮らし。そんな話を聞いた博子さんの県外に住む母親や姉も、近くに移住を決めたという驚きの出来事も。「住民が必要とすることをやっていけたら」。地域の一員として、2人はしっかり根を下ろしている。(古賀真理子)

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