選択的夫婦別姓制度を巡り、地方議会で導入を求める意見書が採択されないようにしてほしいとする文書が各地の議長に送られた。1月末のことだ。自民党の国会議員有志50人が名前を連ね、高市早苗前総務相はこのほど、東京都と大阪府、岩手、三重、沖縄の各県を除き、自民党籍を持つ42道府県の議長宛てに発送したと明らかにした。

 別姓制度について、文書は「家族単位の社会制度の崩壊を招く恐れがある」「子の氏の安定性が損なわれる可能性がある」などと訴える。これに埼玉県議会議長は「地方議会の意思決定を軽んじている」と反発。三重県議会議長も「われわれはわれわれの判断をさせてもらう。強制されることではない」と語った。

 さらに有志に加わった丸川珠代男女共同参画担当相が「担当相として不適格」と批判の的になるなど、波紋が広がっている。高市氏らは、あくまでも要望で、圧力ではないと強調する。しかし50人もの国会議員の連名で別姓導入を求める意見書採択に待ったをかけようとするのは圧力ととられても仕方ないだろう。

 家族の形が多様化し、保守派が重んじる「伝統的な家族観」は色あせようとしている。そうした中、社会進出と活躍を目指す多くの女性の足かせをいかに解くかが問われており、時代の変化をしっかりと踏まえ、国民に開かれた議論を重ねていくことが求められる。

 もともと希望すれば結婚後も別々の姓を名乗れる選択的夫婦別姓制度の導入は、法相の諮問機関である法制審議会が1996年2月、婚外子の相続差別撤廃や女性の再婚禁止期間の短縮などともに民法改正要綱案に盛り込み、答申した。いずれも明治時代に定められた制度で時代の流れにそぐわなくなり、政府は直ちに改正案をまとめた。

 自民保守派の反発で国会提出には至らなかったが、最高裁が結婚していない男女間の子の遺産相続分を法律上の夫婦の子の半分とする婚外子差別について2013年9月、6カ月間だった再婚禁止期間についても15年12月、違憲とする判決を出したのを受け、ともに法改正が実現。これで100日間に短縮された再婚禁止期間を巡り今年2月には、法制審部会が撤廃する試案を公表した。

 しかし別姓を認めない制度は15年最高裁判決で合憲と判断され、積み残しになっている。昨年12月に、導入を積極的に後押しする文言を政府の男女共同参画基本計画に盛り込もうという動きもあったが、自民保守派の反対で大幅に後退した。

 保守派は別姓を導入すれば家族の絆が損なわれ、子どもに悪影響が及ぶと主張する。だが事実婚で別々の姓を名乗り、良好な家庭を築いている例はいくらでもある。そして何より、結婚後の改姓がキャリアの断絶や自己喪失感につながり、仕事や暮らしに支障が出ている人が現に多数いる。世論も別姓導入を支持している。近年、多くの企業や官庁で旧姓を使い働けるようになってはいるが、勤め先や契約相手の事情に左右され、効用の限界が指摘されている。

 最高裁は昨年12月、夫婦別姓を認めない民法規定は違憲と事実婚の3組が起こした家事審判の特別抗告を大法廷に回付した。改めて憲法判断を示す可能性がある。ただ、それを待たず、社会の要請に耳を澄まして動くのが政治の役割だろう。(共同通信・堤秀司)

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