コロナ禍で、多くの妊産婦が不自由と不安のなかで暮らしています。自分や赤ちゃん、家族への感染を心配し、気が休まる時がありません。両親学級や育児教室の中止が相次ぎ、仲間づくりも難しくなっています。立ち合い出産や面会禁止でバースプランは台無しです。元々あった孤独な育児環境にコロナが追い打ちをかけています。

 少子化が進めば、助産師はいらない。どこかで聞いた言葉です。第二次世界大戦後、占領を指揮した連合国最高司令官総司令部(GHQ)の指導の下、アメリカ流の産科医師主導の施設分娩が推進されました。そのなかで助産師不要論が浮上しました。当時のアメリカは、医師が9割の分娩を介助していました。そのため助産師による分娩介助は危険だと思ったのでしょう。大日本産婆会(産婆組合)は、GHQの担当者を現場に案内し、必死に説明しました。その努力が実を結び、産婆は助産師と名称を変え生き残りました。一方地域で活動する助産師は激減し、ほとんどが病院や診療所で働くようになりました。

 コロナ禍後、「そして子どもがいなくなった」とならないために、助産師は母子保健の危機にどう対応すればいいのでしょうか。映画監督のルキノ・ヴィスコンティ(1906〜1976)の「変わらずに残るためには、変わらなければならない」という言葉が知られています。助産師が大切にしたいことは、女性の生涯の健康に寄り添うことです。それが守られるのであれば、変えられるものは変えていきましょう。おっぱいケアや育児相談では直接触れられる対面の方が良いのは言うまでもありません。オンラインに抵抗がある方もいるかもしれませんが、対面が難しい今は母子に寄り添うための有効な手段です。コロナ前の2から3倍になった産後うつ病の予防や早期発見に役立つでしょう。 コロナ危機は当たり前を見直すよい機会です。助産ケアを改革し、妊娠・出産、育児に満足している人の割合を増やしましょう。(佐賀大学教育研究院医学域医学系=母性看護・助産学領域=教授 佐藤珠美)一般社団法人ヘルスサポーターズイノベーション https://www.healthsupporters-i.com)

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