「あなたが好きな春の色は?」。そう聞かれた時、思い浮かぶのは黄色。強い日差しを跳ね返すヒマワリの黄色ではなく、穏やかな陽光を優しく受け止める菜の花の黄色だ◆きょう12日は、詩人伊東静雄(1906~53年)の命日で、「菜の花忌」と呼ばれる。伊東は諫早市出身だが、旧制佐賀高校で学んだ。佐賀での青春時代が伊東の感性に影響を与えたかと思うと親しみがわく◆伊東の「春浅き」という一編は、幼子が摘んできた野草の名を聞かれ、名前が分からず白花(しろばな)、黄花(きいばな)と色で答えた様子を編む◆きのう東日本大震災から10年を迎えた。温暖な九州と違い東北は春まだ浅い。10年を経ても「あの日」の悲しみは消えないだろう。一方でやがてくる春に、名も知らぬ草花の色に、被災地の人々は力をもらい、勇気づけられた日もあったのではないか、とも想像する◆詩人の山村暮鳥(ぼちょう)(1884~1924年)に「いちめんのなのはな」を繰り返す「風景」という詩がある。記者時代に神埼郡を担当していた時、春は城原川の土手に咲き誇る、まさに「一面の菜の花」を見るのが楽しみだった。先日、本紙に載った写真で、小城市の晴気(はるけ)川に同じような風景があることを知った。佐賀平野では日に日に麦の緑が深まる。人を元気づけるにはまず自分から。さあ好きな春の色を見つけに行こう。(義)

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