福岡県太宰府市で女性が暴行され死亡した事件で、家族らが事件前に鳥栖署へ複数回相談していた問題に関し、佐賀県警が対応に不備はなかったとの認識を改めて示したことに遺族側が反発している。松下徹本部長は2月下旬の着任会見で、県公安委員会からの提言を基に、丁寧に相談に応じる通達をしたと明らかにしたが、事件の相談対応については「女性の身に直ちに危害が及ぶ可能性は認められなかった」と、これまでの県警の主張と同様の見解を示した。相談体制は県民の安心や安全につながる根幹で、警察組織の信頼にも関わる。幕引きを急ぐことなく、再調査を実施することも視野に、対応や組織を見つめ直すべきだ。

 事件が発覚したのは2019年10月20日早朝だった。太宰府市のインターネットカフェ駐車場の乗用車内で、市内の女性=当時(36)=の遺体が見つかった。福岡県警の司法解剖によると、全身にあざや刺し傷があり、死因は外傷性ショックだった。

 この事件では福岡県内の男女2人が傷害致死罪などに問われ、主犯格の被告の女(42)については福岡地裁が2日、懲役22年の実刑判決を言い渡した。

 女性の実家がある三養基郡基山町の家族らは事件前、鳥栖署に複数回相談していた。この時の対応が適切だったのかどうかについて、佐賀県警と遺族との間で認識が大きく異なっている。

 県警は昨年10月に公表した内部調査結果で、女性が亡くなった重大性を認めつつ「相談内容は金銭貸借に関するトラブルで、身の危険を訴えるものではなかった」とした。これに対し遺族は「繰り返し、身の危険を相談していた」「調査はでたらめ」などと主張し、再調査を強く求めた。

 しかし県警は「対応に誤りはない。遺族には相当に時間をかけて説明した」などと主張、調査結果公表後の11月の記者会見で「調査を再度行う状況にない」と早々に言い切ってしまった。その後の県議会などでも同じ答弁を繰り返し、批判が広がる形になった。

 体調不良で異動した前任の本部長に代わって就任した松下本部長の会見を受け、遺族は「トップがいくら変わろうと、何も変わらず残念だ」と報道各社に談話を寄せており、不信感は拭えないままだ。

 県警は県公安委からの提言を基に、今後は複数人で相談を受けるなど、より丁寧に応じることを盛り込んだ本部長通達を全職員に出した。ただ、鳥栖署の相談対応に関する再調査に関しては否定的だ。松下本部長は「公安委は県警の第三者的管理機関として調査し提言を出した。県警としては遺族の要望に沿うものと考えている。これ以上の調査は考えておられないということだ」と述べている。

 この点を再調査しないままでは、いくら今後の相談対応を徹底しても、警察組織に対する遺族側の反発はくすぶり続けるだろう。

 全国に目を向ければ、警察が家族らの相談に真摯(しんし)に対応しなかったことなどで桶川ストーカー殺人事件や栃木リンチ殺人事件が過去に起きている。これらを教訓化するために、2000年に発足した警察刷新会議は住民相談への的確な対応を緊急提言で求めている。

 太宰府のケースでは判決後、会見した裁判員からも佐賀県警の対応の不備を指摘する声が相次いだ。県警はこうした批判も真摯に受け止め、対応を検証していく姿勢が求められる。(林大介)

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