新型コロナ禍によるテレワークの推進などで人々の働き方や東京の人口一極集中に変化が生まれ、地方への移住促進に力を入れてきた自治体には“追い風”となっている。オンラインの移住相談会には、東京都内などから移住先を探す相談者が増えているという。県内の市町もそれぞれの良さをPRし、チャンスを生かしたい。

 総務省によると、新型コロナの感染者が多い東京都は昨年7月から7カ月間、転出者が転入者を上回る「転出超過」が続いている。移住相談会では「会社に出勤せず、テレワークできるようになったので、東京にいる必要がなくなった」などとして、数カ月内に引っ越したいという相談者が少なくないという。通勤の必要がなくなれば、感染リスクが高く、家賃も高い都市部に住み続ける必要はなくなる。新型コロナの感染収束が見通せない中、こうした移住希望者は今後も出てくるだろう。

 鳥栖市も2018年に体験施設「お試し移住住宅」を開設するなど、人口増を持続させようと移住促進に力を入れてきた。佐賀県移住支援室が福岡や東京で開く相談会に年5回ほど継続して参加してきた。新型コロナの感染拡大で、対面式の相談会は中止されたが、代わりに開かれるようになったオンライン相談会は「従来の対面式より有効ではないか」と同市の担当者は手応えも感じている。

 移住検討者は「子どもを地方で育てたい」という30~40代の子育て世代が多い。対面式の相談会は託児所を設けてはいたものの、子どもがまだ小さかったり、子どもが数人いたりしたら参加できない場合もあったと考えられる。その点、オンラインだと自宅から参加できる。相談中、画面の向こうで子どもたちが行き来するのが見えると言い、より多くの移住希望者が相談会に参加できるようになったと感じている。

 また、対面式では現住所や出身地など基本事項から質問していた。オンラインでは「市や町に聞きたいこと」「移住先に求めること」なども含めて事前に記入してもらい、要望を把握してから相談に臨むスタイルに変わり、相手に応じた情報提供がしやすくなったという。コロナ禍を契機に始まったオンライン相談は「やってみると双方にメリットがあった」と担当者は感じており、こうした変化も移住促進のプラスに働きそうだ。

 鳥栖市への相談者は、夫婦のどちらかが九州出身という地縁者が多く、福岡で働き、高速道やJRを使って長崎や熊本・鹿児島方面の実家に行けるのを便利と感じるケースが多いという。移住への関心が高まる中、鳥栖市は2月末に移住情報サイトを更新してイメージアップを図り、新年度も新たなPR事業を計画している。

 「チャンスが生まれているのは地方全体に言えること」と鳥栖市の担当者が言うように、移住希望者にはそれぞれの要望やニーズがあり、県内の市町にもそれぞれの良さがある。2月に開かれた、民間の全国移住フェアには県内5市が、県主催の相談会には16市町が参加したというが、こうした機会を多くの市町で生かしてほしい。コロナ禍で多くの活動が停滞する一方、地方移住は活性化している。市町は積極的な情報発信で移住を促し、佐賀に新たな活力を呼び込んでほしい。(樋渡光憲)

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