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 先日、心が震える一本の電話があった。

 1年程前のある日。私が運転中に前方を走る1台のバイクが、対向車線から右折する自動車に衝突。ものすごい衝撃音とともに跳ね飛ばされるバイクと、宙を舞う運転手。気が動転しながらも車を停車し駆け付けた。ヘルメットを外し声を掛けるも、顔面蒼白で意識もなく呼吸もない。

 過去に10年ほど介護関係での仕事に携わっていた経験から、一刻を争う事態だと判断し、偶然通りがかった同級生と肩を叩きながら声を掛け、無我夢中に心臓マッサージをやった。

 数十分続けただろうか。口元にわずかながら反応があった。助けられるかもしれない。詳しいやり方や回数などは覚えていなかったが、過去に3回ほど救急救命講習を受けていた経験が、自分の背中を押してくれた。

 救急救命隊が到着。祈る思いで託した。その後ドクターヘリで搬送されたと聞かされた。その後もどうなったのかずっと気掛かりだった。事故という文字を見たり、その道を通るたびに思い出していた。

 あれから1年。先日一本の電話があった。私が本人である確認ができると、電話越しで泣き崩れるような声に一瞬、頭が真っ白になった。

 そう。あの時バイクを運転していた本人からの、退院できたとの連絡だった。脊髄を損傷するほどの重体で、後遺症や車椅子での生活は避けられない可能性が高いと言われていたが、奇跡的な回復で杖をついて歩行できるほどになられたとのこと。

 あの時の心臓マッサージがなかったら間違いなく助かっていなかったと聞かされた。ほっとして涙があふれた。救急救命講習の経験が、本当に人の命を救うことにつながるんだということを改めて体験させてもらった。

 自分の大切な家族や我が子、友人が目の前でそのような状況になった時を想像してみてください。救急救命隊が到着するのをただ待つことしかできない、大切な人が危ないのに何も手を差しのべられない程悔しいものはないでしょう。大切な家族や我が子を自分の手で救うことができる可能性を1%でも上げることができる。

 機会を作ってでも受けるべき救急救命講習だと私は思います。我が子と遊ぶこと、関わることだけが育児参加ではないような気がします。いざという時のために今てきる準備をすることも、大切なことですよね。パパとして、パパだからできることを。(パパ記者・片桐亮=いまパパ~いまりパパネットワーク~代表)=片桐さんのコラムは随時掲載しています。

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