新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響により、多くの人々に仕事や家庭における環境の変化が生じました。COVID-19の実態はどうなのか、いつ収束するのか、などの見通しもつかない状況下で、不安になり、環境の大きな変化によるストレスにさらされた方も多いと思われます。

 一般に、ストレスが増大すると、血漿(しょう)コルチゾール(副腎皮質から分泌されるストレスホルモン)が増加します。このコルチゾールの増加は、脳内の元気ホルモンといわれているセロトニン分泌を抑制する結果に至ります。セトロニンといえば、現在のうつ病仮説である「脳内セロトニンの分泌抑制」を引き起こす結果につながります。つまり、うつ状態に至る可能性がより高くなってしまうわけです。また、自粛生活を続け、外出を控えていると、太陽光を浴びる時間が短縮されます。昼間、太陽光をたくさん浴びていると、セロトニンは夜にメラトニンに変化し、自然で十分な睡眠を得ることができます。私たちが睡眠覚醒リズムを維持するには「太陽光」が不可欠です。

 うつや自死が多い国として、ロシアの北部、スカンジナビア諸国(フィンランド、ノルウェー、スウェーデンなど)をあげることができますが、それらの国の日照時間は高緯度に位置しているため、季節によって太陽光の届き具合がかなり違います。スウェーデンの冬は日の出が朝9時ごろで、日中も完全に日が真上に昇ることはなく、ずっと夕方のような日差しが続きます。冬至のころには、15時前に日が沈んでしまうこともあるそうです。日照時間が短いがために、うつになりやすく、これらの国に住んでいる方は、太陽が出ると、外出し、太陽光を浴びることが健康維持に大切であることを知っています。

 太陽光は無料です。うつに陥らないためにも、自粛生活は行いつつも、できるだけ外に出て、自然な太陽光をしっかり浴びることが、うつの予防につながります。(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授・副センター長・統括産業医 佐藤武)

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