「のに」がつくと愚痴が出やすくなる。後に続く言葉に否定形が多くなるからだ。「あんなに頑張ったのにうまくいかなかった」。残念だが努力が報われない時はある。自分に向けて言うのはまだいいにしても、「あんなにしてあげたのに」と他者に向かうといけない。自分の思い通りにならないと喜べなくなっていないだろうか◆きょう5日は二十四節気の一つ「啓蟄(けいちつ)」。土中に眠っていた虫たちが目覚め、地上に出てくる時分。「こもる」の意味がある「蟄」の字をよく見ると、なるほど虫が縮こまっている◆虫も心浮き立つ時季なのに、人は啓蟄を迎えられず、自粛生活が続く。首都圏の1都3県で、7日までだった緊急事態宣言が再延長されそうだ◆「いろんなことを我慢したのになぜ」。卒業シーズン。謝恩会や追い出しコンパ、卒業旅行とやりたいことがいっぱいの若者ほど「のに」の思いを消せないだろう。青春時代は、たとえ1秒でもかけがえのない時間。コロナ禍のこの1年、若い世代にさまざまな我慢を強いてきたことを申し訳なく思う◆ただ、長い人生では「特別な出来事」より「いつでもできる」と思うことが大事だったりする。どんなささいなことも一度きりと思って全力投球するしかない。「みんなが頑張ったから今がある」。少し遅くても、そう思える春が来るといい。(義)

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