服飾評論家のピーコさんは、がんで左目を摘出した。退院すると、友人の永六輔さんが「おしゃれ目の会」をつくった。片目を失い元気をなくしたピーコさんに義眼をプレゼントしようと、募金を呼び掛けてくれたのである◆永さんは言ったという。「きみは『縦糸』の友達なんだもの」。織物は縦糸が決まらないと、横糸が引っかからない。織り上げていく人生を支えてくれる「一生の友」なのだ、と。闇の中を歩くとき、助けになるのは友の足音である◆もちろん「横糸」の友達もある。ほんの一時期の交わり。2人はいったいどんな「友達」だったのか。福岡県篠栗町で5歳の男児を餓死させた疑いで逮捕された母親と「ママ友」である。貯金通帳まで渡した母親は、時折与えられるわずかな米をおかゆにし、子どもたちと分け合って食べていたという◆わが子を橋渡しにした人間関係にはむずかしさもある。自分の相性でつながった相手でもない。かといって関わらないのも勇気がいる。群れてはいても、皆ひとりぼっちなのかもしれない◆ピーコさんは語っている。〈友だちをつくるコツっていうのは、「もらわないで、あげる」〉。与えることができているか。もらいすぎてはいないか。家庭を壊し、金銭を巻き上げ、幼いいのちまで奪うのが友であるはずがない。あるいは、人でさえも。(桑)

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