一般会計総額が約106兆6千億円と過去最大となる2021年度予算案が衆院を通過、年度内の成立が確定した。

 社会保障費や防衛費の増加、新型コロナウイルス対策費が歳出膨張の要因だが、衆院の審議では、政府、与党の相次ぐ不祥事が焦点となり、社会保障制度の在り方や財政再建への取り組みなどの議論は深まらなかった。

 不祥事の責任は全て政府、与党にある。審議の過程で目立ったのは後手に回る対応と、それに対する説明の不足だ。その結果として国民の信頼を損なった責任は重い。

 政権が今後、取り組まなければならない課題は、国民に引き続き不自由な生活を強いる新型コロナ感染症対策や、丁寧な周知・広報が必要な全国でのワクチン接種、万全な感染防止と市民ボランティアの支援が求められる東京五輪・パラリンピック開催など、いずれも国民の理解と協力が欠かせないものだ。信頼を取り戻す真剣な取り組みが政権に求められている。

 国民との信頼関係は政権運営の基盤だ。この基本に対する菅義偉首相の認識の甘さを露呈したのが、総務官僚時代に放送事業者の接待を受けていた山田真貴子前内閣広報官の進退問題と言える。

 首相の長男が勤める会社からの接待が明らかになった後も、首相は「女性の広報官に期待している」と続投させた。

 だが、内閣広報官は首相の記者会見の進行役を務めるとともに、内閣の重要政策の広報を担う内閣と国民をつなぐパイプ役だ。山田氏は結局、体調不良を理由に辞職したが、首相の続投判断は国民との信頼関係への目配りを欠いたものだったと言わざるを得ない。

 さらに、山田氏の辞職後も首相はあくまでも体調不良が理由だとし、不祥事に何のけじめも付けていない。これで国民の理解が得られると考えているのだろうか。

 相次ぐ不祥事は、自民、公明両党の長期政権下で生じた規律の緩み、おごりの表れと言うしかない。新型コロナの緊急事態宣言下に自民、公明両党幹部が高級クラブに出入りしていた問題では国会や党の役職辞任で済ませようとしたが、その後、離党や議員辞職に追い込まれた。自民党は他の議員にも離党が拡大した。

 総務、農水両省幹部が受けていた接待は明白な国家公務員倫理規程違反だ。首相には最高指導者として政権の規律を引き締める責務がある。官僚接待では行政がゆがめられた事実はないのか。国会で引き続き徹底解明に取り組むべきだ。

 国民が今、一番知りたいのはワクチン接種の計画だろう。これに関しても、政府の説明は不十分だ。一般の国民はいつになったら接種できるのか。全国知事会は緊急提言で、接種計画の全体像を明示し、正確な情報を提供するよう求めた。

 新型コロナ対応を巡る予算委員会審議では、与野党の基本的な考えの違いが明確になった。立憲民主党などは「ゼロコロナ」を目指すべきだと主張し、首相が経済重視に固執して「物事を楽観的に見過ぎている」と批判。首相は「地域経済に欠かせない政策を進めてきた」と反論した。

 感染症対策は息の長い取り組みになる。参院の審議でも対策の基本軸をどこに置くのかの議論を深めてもらいたい。政府には野党の主張にも耳を傾け、理のある対策は取り入れるよう求めたい。(共同通信・川上高志)

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