政府は新型コロナウイルス緊急事態宣言を巡り岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の6府県を今月末で解除すると決めた。残る首都圏4都県は3月7日解除を目指す。

 宣言解除は「出口」ではない。ワクチン接種の効果が出るまでの間、感染拡大再燃は何としても阻止しなければならない。むしろこれからが正念場であり、菅義偉首相は先頭に立って国民に理解、協力を求めるべきだ。にもかかわらず官邸玄関で取材対応はしたものの正式な記者会見は開かなかった。首相は説明責任から逃げてはいけない。

 6府県は、ほぼ全ての指標で感染状況が最も深刻な「ステージ4(爆発的感染拡大)」を脱している。ただ福岡は病床逼迫(ひっぱく)の改善が鈍くぎりぎりまで検討が続いた。それでも県側が解除を求め、政府は感染者減少に伴い医療体制も改善していくとして解除対象に加えた。「見切り発車」の感が否めず、再燃しないか警戒が特に求められる。

 首都圏4都県は新規感染者が減少傾向だが、他地域より減少スピードが鈍化し医療体制への負荷が高い。中でも千葉は増加に転じる動きも見られた。政府は期限通り3月7日で解除したい意向だが、冷静さが必要だ。あと1週間状況を見極め、必要なら解除先送りの選択も排除すべきでない。

 なぜ再燃が怖いのか。それは、感染力が強い変異ウイルスが出現しており、感染大流行の「第4波」の引き金になりかねないからだ。3、4月は卒業、入学、就職、花見など人が多く集まり、交流するイベントが多い。火が付けば一挙に広がりやすい季節を迎えたことをきちんと認識したい。

 今また感染者が増加に転じれば、医師らが患者治療に取られ、ただでさえ人手が足りないワクチン接種作業にしわ寄せがいく。そうなれば感染収束が遠のく悪循環に陥る。日本医師会の「新規感染者数を徹底的に抑え込み、その状態でワクチン接種を推進し一気に収束までの道筋を付けることが重要」(中川俊男会長)との指摘は的確だ。

 政府は、宣言解除後も飲食店に時短営業を引き続き要請し、イベント制限も段階的に緩和していく方針だ。さらには、解除地域での再燃を防ぐため、1日1万件を目標に繁華街などで無症状者対象に無料のPCR検査を実施する。「ようやく」の感もあるが、従来にない「攻め」の検査態勢は前向きに評価したい。

 宣言が発令されていた10都府県の繁華街への人出は、特に夜間で既に増加傾向にある。私たちも改めて不要不急の外出は自制したい。卒業旅行、謝恩会、歓送迎会なども控え、宴会を我慢し純粋に花をめでる「コロナ下の花見」に徹しよう。

 1年延期された東京五輪は3月25日に聖火リレーが福島県からスタートし、重要なステージを迎える。観客の上限や海外からの観客受け入れ可否の判断もそのころに想定される。感染再燃を抑止することで、五輪・パラリンピック開催に明るい展望をもたらしたい。

 首相は首都圏で宣言が続くとして会見を見送った。司会役の山田真貴子内閣広報官が首相の長男らから高額接待を受けた問題の渦中にあり、自身も含め質問攻めに遭うのを避けたと思われても仕方あるまい。首相は昨年末、コロナ対応で「国民に丁寧にコミュニケーションを取る」と明言した。約束を忘れては困る。(共同通信・古口健二)

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