好きなのは「シブがき隊」「クリスタルキング」「山口百恵」。遠い青春時代をなつかしむ中高年…ではなく現役の中学生である。アナログレコードを探して、佐賀市で音楽ソフトを扱う久米楽器店に、わざわざ久留米市からやってきたという◆演歌の品ぞろえに力を入れてきた店先に、中古レコードが並び始めたのは2年ほど前。「むかし買えなかったあこがれの一枚」を求める人は意外に多く、店で一番売れたのは80年代のユーミンのLP、という内心複雑な時期もあったとか。コロナ禍のいま、福岡まで買いに行けない音楽ファンが近場に足を向け、売り場は拡大を続けている◆音楽配信サービスなら定額で数千万曲が聴き放題という時代に、30年以上も前に音楽メディアの主役の座を追われたレコードが復権している。「シティポップ」と呼ばれる70~80年代のサウンドが海外で注目されたこともあり、国内の売り上げはこの10年で10倍以上になった◆「音だけの、使い捨てみたいな音楽より、丁寧に作られた形あるものがやっぱりいい」と経営する藤田嘉満さん。「むかしはジャケットを抱えているだけで仲間同士の会話が生まれた。そんなつながりが大切なんですよね」◆プチプチという雑音の間から聞こえるのは郷愁であり、絶頂期の日本の輝きでもある。またプレーヤーがほしくなった。(桑)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。

このエントリーをはてなブックマークに追加