愛知県知事リコール署名偽造の構図

 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡る不正署名問題で、運動事務局の指示で動員されたアルバイトが佐賀県内で署名を偽造した疑いが明らかになった。「一目で同じ筆跡が並んでいると分かる署名簿」(自治体職員)をなぜ作ったのか。関係者は「署名が集まらない現状に危機感を抱き、水増しに手を染めたのではないか」と指摘する。指示役は誰なのか、愛知県警の捜査が焦点となる。

 「明確に何の関係もない。そう信じている」。リコール運動を始めた美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長は22日に記者会見し、運動事務局による偽造への関与はないと明言した。田中孝博事務局長も「一切関与していない」と改めて強調した。ただ、同席した弁護士は「運動に関与した人は7万人いる。全員の把握は不可能だ」と事務局による調査には限界があると説明した。

 関係者によると署名偽造の構図はこうだ。名古屋市の広告関連会社がリコール事務局から「とにかく人を集めてくれ」と依頼され、アルバイト募集を数百万円で受注。人材紹介会社を通じてバイトを雇った。バイトは昨年10月に佐賀県内の貸会議室に集められ、用意した名簿を基に署名簿に氏名や住所を書き写した。現地では事務局関係者が直接バイトに指示していた疑いがある。

 愛知県選挙管理委員会の調査によると、提出された約43万5千人分の署名のうち、8割超に当たる約36万2千人分が無効と判断されており、バイトによる「偽造署名の大量生産」(名古屋市議)が行われた格好だ。

 本来、署名数が解職の賛否を問う住民投票実施に必要な法定数に届かなければ、選管による署名の審査は行われない。今回のリコール運動の提出署名は法定数の約86万6千人分の半分ほどにとどまり、審査の対象外。運動関係者から不正があったとの指摘を受けて選管が調査した経緯がある。

 署名集めを担う受任者として活動した名古屋市の男性は「街頭署名をやった実感からすると、10万筆くらいだと思っていた」と証言。バイトが動員された昨年10月は、リコール運動が期限を迎える時期と重なることもあり、リコール運動関係者は「署名が法定数に届かなければ審査されないのを分かった上で、運動の実績を誇示するために署名を積み増したのではないか」と分析する。

 県警は県選管からの告発を受け、既に広告関連会社社長から任意で事情を聴くなど捜査を進めている。再発を防ぐためにも全容の解明が求められる。(共同)

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