世界一周。なんて魅惑的な響き。海を初めて見た先人たちは「あの水平線の向こうに何があるのか」と思ったのだろう。好奇心を推進力に替えて冒険の旅に出た。小学生の時、ワクワクしながら読んだジュール・ベルヌの『十五少年漂流記』や『八十日間世界一周』を思い出す◆同じくらいの日数をかけヨットで世界一周する「バンデ・グローブ」で今月、海洋冒険家の白石康次郎(しらいし・こうじろう)さん(53)がゴールした。記録は94日21時間32分。単独無寄港無補給の、世界で最も過酷なレースといわれ、アジア勢の完走は白石さんが初めて◆白石さんは26歳の時、ヨットによる単独での世界一周に成功した。当時の史上最年少記録。「金なし、人脈なし、実績なし」の若者が夢をかなえた歩みを「動けば動くほど多くの人と出会い、その中に夢につながるチャンスが芽生えてくる。その道のりは派手でもなければ格好いいものでもない。ほんの小さな一歩の積み重ね」と自著に記す◆流氷や嵐など自然は脅威となる一方、満天の星空など海上でしか見られない美しさを提供してくれた。世界は広く、知らないことだらけ。そのことを踏まえ、全てのものに対し謙虚でありたいと思う◆危険と隣り合わせの世界一周は難しく、豪華客船の旅も憧れのままで終わりそう。まずは県内一周か。これも魅惑の響きがある。(義)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。

このエントリーをはてなブックマークに追加