「学問の神様」として知られる福岡県の太宰府天満宮には「中途半端な気持ちの二人がデートコースに選ぶと仲を裂かれる」という「縁切り」の俗説があるらしい◆太宰府に左遷され、家族が離散した菅原道真すがわらのみちざね)公(845~903年)の怨念からきているという。だが、すてきな歌をたくさん詠んだ道真公が後世にまで恨みを残すはずはないと思う◆〈東風(こち)吹かば匂ひ起こせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ〉。梅が咲くこの時期になると真っ先に思い浮かぶ一首だ。大事にしていた京都の自邸の梅に「東風が吹けばちゃんと咲くのだぞ。私がいなくなっても春を忘れないで」と語り掛けた歌。その優しい思いに応え、梅が一夜にして太宰府に飛び、花を咲かせたという「飛梅(とびうめ)伝説」が好きだ◆「梅は花を見せて人を喜ばし、実は食卓を飾り、薬になって人を助ける。梅のような人間になりなさい」。養父からそう言われたのは、佐賀にわかの第一人者だった筑紫美主子(ちくし・みすこ)さん(1921~2013年、本名古賀梅子)。今年は生誕100年にあたる◆「縁」という糸は、それに気づき、大切にするかどうかで細くも太くもなる。互いを思う心が飛梅のような奇跡を起こすこともあるだろう。縁切りではなく縁結びの御利益を信じ、太宰府の梅を見に行こうか。久しぶりに梅ケ枝餅も食べたくなった。(義)

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