鳥栖市立保育所「鳥栖いづみ園」で1月、県内の保育所で初めてとなる新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者集団)が発生した。保育所は臨時休園を余儀なくされ、市の担当課は代替保育の準備に追われた。今後、同様の事態はどこでも起こり得る。鳥栖の教訓を、それぞれの市町での今後の備えに生かしたい。

 いづみ園は1月12日以降、職員16人と園児4人、家族や関係者を含め計31人が感染し、13日から26日まで臨時休園した。職員43人は全て感染者か濃厚接触者に該当するとして26日まで2週間、保育業務に従事できなくなった。

 国は保育所の役割を重視し、保育士が濃厚接触者などに特定されても、働く保護者らに必要な保育を提供するよう市町に十分な検討を求めている。鳥栖市も代替保育を検討し「他園で行うことには不安の声もある」として実施場所はいづみ園と決め、他の市立保育所3園から5人の応援を得て20日から実施した。ただし、多くの園児には対応が困難として両親が救急医療従事者かひとり親世帯に絞り、最も多い日で3人が利用した。

 「仕事が休めない」と困惑する保護者がいた一方、新型コロナへの理解が進み、仕事を休むように職場側から伝えられた保護者も少なくなかった。しかし、新たな感染者が出て休園期間が延長されれば家庭保育ができなくなり、さらに多くを受け入れる代替保育が必要になっただろう。

 クラスター発生を受け、私立を含む鳥栖市保育会も協力を申し出た。今回は市立保育所で対応できたが、万一の際はこうした市町ぐるみの協力態勢が不可欠になる。ただし、代替保育を実際に行うには「どこで」「だれが」などの事前協議が必要だ。応援要請に応えられる園とそうではない園があり、同居家族に乳児や高齢者がいる保育士を応援要員に組み込むかどうかなどの事前合意もいる。ある現場の保育士は「アレルギーがある子もいるので、代替保育で同一の給食は出せないのでは。子どもを安全に預かるには、十分な情報や準備が要る」と指摘する。

 感染者は退院後、10日間の自宅待機を経て復帰したが、県は「自宅待機は推奨するが、義務ではない」と説明する。保護者は早期の再開を望む半面、「先生の体調は万全だろうか」という懸念も抱く。自宅待機のあり方についても事前に決めておくべきだろう。

 いづみ園など鳥栖市の多くの保育所はこの春、市の補助でICT化を進め、一斉メール配信などが可能になる。今回は導入前だったため、園や市の職員は、臨時休園や園児のPCR検査のための電話連絡に深夜まで追われ、代替保育や園再開を伝える文書は郵送だった。国はコロナ対策の側面からもICT化を促している。これからは一斉メールなどが緊急時の負担や混乱を減らし、迅速に情報伝達する重要なツールになりそうだ。

 市によると初動時に最も大変だったのは、濃厚接触者の範囲を判断するため保健福祉事務所に提出するリスト作りだったという。職員らの基本情報が入ったリストが事前にあれば、職員同士の接触度合いの精査に注力する時間が生まれ「職員の一部は濃厚接触者ではないという判断を得て、後の代替保育が担当できたかもしれない」と話す。こうした現場の経験こそ今後に生かしたい。(樋渡光憲)

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