昭和20~30年代の漁村の暮らしを写した写真展が、伊万里市波多津町の波多津コミュニティセンターで開かれている。地元のアマチュアカメラマンの故・田中敬太郎さんが地域行事や日常の一場面を切り取った144点を展示。戦後の復興を遂げた人々の力強さがモノクロの画面から伝わってくる。
波多津町まちづくり運営協議会が、田中さんの家族の協力を得て開いた。九州電力の社員だった田中さんは昭和28(1953)年、子どもの成長を記録しようとカメラを購入した。当時カメラを持っている人は珍しく、結婚式や祭りなど行事のたびに撮影を頼まれた。それから2005年に94歳で亡くなるまで、半世紀にわたって地域の人々を撮り続けた。
写真展では、田中さんが残した膨大なフィルムの中から、昭和30年代中ごろまでの写真を展示している。運動会や相撲大会、櫓(ろ)こぎ競争、出初め式…。当時は地域でさまざまな行事が行われ、子どもからお年寄りまで大勢でにぎわった。今より娯楽は少なく、生活も楽ではなかったはずなのに、人々は明るく生き生きしているように見える。
フィルムを提供した田中さんの五女、美代子さん(72)は「父は撮った写真を見てもらうのが好きで、自宅に暗室までつくってみんなに配っていた。できるだけ多くの人に見てほしい」と話している。
期間は3月31日まで。土日祝日は休み。新型コロナウイルス対策のため、観覧を伊万里市民に限定している。展示作品を4月以降、市のホームページで公開する予定。問い合わせは波多津コミュニティセンター、電話0955(25)0001。(青木宏文)