食卓につくなり、「米が硬い」「みそ汁が薄い」「おかずがいまイチ」…。年とともに、思ったことがつい口に出てしまっていけない。そんな小言を繰り返しているうち、「じゃあ、勝手に食べれば」なんて話になる◆家族と同居でも一人で食事をする男性は、家族と一緒に食べる男性に比べ、死亡リスクが1・5倍高いという怖いデータもあるらしい。評論家の樋口恵子さんが書いている◆樋口さんによると、高齢期を生きるうえで大切なのは、三つの「ショク」。健康を維持するための「食」、他者とふれあう「触」、ささやかでも世の中の役に立つ「職」。それなのに、コロナ禍で食卓を囲むことも、仲間と集まることも、働くこともリモートで「孤」の時代になってしまった、と◆客足が減り苦境に立つ飲食店で、食事中の会話を控える「黙食」を呼びかける動きが全国に広がっているという。いま求められるのは「孤」ではなく「黙」。外食そのものが悪いわけではない。県内の飲食店に出されていた営業時間の短縮要請もあすまでで解除される。会話は交わさなくても、人の気配が感じられる、居心地のいい空間が戻るといい◆では家庭内で「孤」を避ける極意とは。戦国武将、伊達政宗の言葉にある。「朝夕の食事は、うまからずとも褒(ほ)めて食うべし」。あ、いいから黙って食えって?(桑)

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