あまりにも不用意で不適切な発言だった。翌日の記者会見で謝罪し撤回したが、菅義偉首相は衆院予算委員会で「あってはならない発言」と断じた。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、日本オリンピック委員会(JOC)名誉委員として出席したJOC評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と話した。

 国内のメディアばかりか国際通信社、米国の有力紙、英国の公共放送など影響力の大きな海外メディアも女性を蔑視する発言だと批判的に取り上げた。

 五輪は世界が注目する祭典だ。最高峰のスポーツ大会にとどまらず、平和や希望を感じ取れる貴重な機会と捉え、開催を心待ちにする人は多い。

 その明るいイメージを何より大切にする国際オリンピック委員会(IOC)と、日本の政府、東京都、そして大会組織委は新型コロナウイルスの感染拡大がやまない中、1年間の延期を経て開催準備のラストスパートに入ろうとしている。

 開会式まで半年を切ったこのタイミングで、このような発言が組織委の会長から出たことは大きな驚きだ。

 森会長はJOCの枠組みの発言であって、組織委会長の職務と結びついたものではないと強調したが、もちろん、その言い訳は通用しない。

 森氏は組織委にも女性の理事らは7人ほどいて、国際的な舞台での経験があり、的を射た発言をしている、とも話したが「女性というのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言うと、自分も言わないといけないと思うのでしょう。みんな発言される」などと語った。

 JOCは女性の社会進出を加速しようとの世界的な動きに沿って、女性理事を増やし、その割合を全体の40%まで拡大する目標を掲げ、動き始めたばかりだ。目標値を定め、その達成を目指すやり方は世界基準となった。その取り組みに逆行する発言だったことで、JOC内部からも批判が上がる。

 東京五輪の準備は無観客、もしくは無観客に近い規模であっても開催する方針が固まり、IOCの主導で政府、東京都、組織委は連携を強めている。しかし、さまざまな世論調査で浮かび上がってきた国内の市民の全般的な反応は、コロナ対策に全力を傾けるべきで、この夏の開催には賛成できないというものだ。

 森会長の発言によって、東京五輪のイメージは傷ついた。それでなくても開催に懐疑的になっている市民は、組織委のトップに失望しているに違いない。

 IOCは、森会長の謝罪と発言撤回を受け「決着した」との声明を出して火消しに回った。しかし、IOCと組織委それぞれの協賛企業は、社会の価値観に同調できない組織委のリーダーと五輪のイメージ低下を、そうやすやすと容認するだろうか。

 発言内容には女性委員に限らず、会議で時間をかけて民主的な論議を深めることへの理解が感じられない。逆にそれを否定する考えがのぞく。

 森氏は辞任する考えはないと言い切った。しかし、会長にとどまることでさまざまな悪影響が今後表れれば、身の処し方を再考する機会があるのではないか。会長として不適格で、発言は辞任に値する。(共同通信・竹内浩)

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