三養基郡上峰町の方角から戻る目達原駐屯地のヘリ。神埼市の事故現場近くの住民は、どのヘリコプターの音にも敏感になっていると話す=4日午後2時半ごろ、神埼郡吉野ヶ里町

 神埼市千代田町の住宅に陸上自衛隊目達原駐屯地(神埼郡吉野ヶ里町)所属のAH64D戦闘ヘリコプターが墜落し、隊員ら3人が死傷した事故から、5日で3年。事故原因は特定されず、処分対象者もいないまま陸自の調査は全て終了した。陸自ヘリの訓練に住民の不安は消えず、専門家は事故の危険と隣り合わせにある自衛隊駐屯地との向き合い方を問い掛ける。

 「2人も亡くなっているのに、原因が分からないまま捜査が終わってしまったことは、おかしいのではないかと思う。地元住民として不本意」。事故当時、現場の区長だった松永順二さん(71)は、原因も責任の所在も分からないまま調査が終了したことに「何かを示してほしかった。同じような事故が再び起きることが怖い」とこぼした。

 陸自は事故調査や警務隊の捜査の結果、2020年12月、「処分対象者はいない」と結論付けた。事故調査委員会は前年の19年9月、事故原因が主回転翼のボルトの破断とする調査結果を発表したものの、破断原因はメーカー側と、整備や運用をする陸自側のどちらかに絞り込まず、両論を併記していた。

 事故現場となった神埼市の松本茂幸市長は「責任の所在について何かを意見する立場にない」とする。ただ、事故への不安がある住民もいるとして「何よりも原因が明確にされないまま調査が終了したことが残念」と述べ、再発防止の徹底を求めた。山口祥義知事は「防衛省は(墜落時の)あの時の地域住民の思いを受け止め、安全第一で運航してもらいたい」と話す。

 防衛ジャーナリストの半田滋さん(66)は「事故が起きた責任はどこかにあるが、原因が明確にならなかったことで責任も明確にならなかった」と指摘する。処分対象者がいなかったことについて「調べ尽くした上で部品破断の原因が絞りきれなかったとすれば、自衛隊側で誰かを処分するのは筋ではない。今回の場合、被害への補償が事故を起こした自衛隊としての責任の取り方になるのではないか」との見方を示す。

 事故について半田さんは「周辺に住宅のある目達原駐屯地の危険性除去という課題が、現実に存在するということ示した。地域と自衛隊基地がどう向き合うかという問題を突きつけている」と捉える。佐賀市の佐賀空港への陸自輸送機オスプレイ配備計画では、目達原ヘリの移駐も含まれており「計画をどう捉えるべきか、簡単ではないが、地域の一人一人が考えなければならない問題だ」と強調した。

 神埼市は現在も墜落現場の家族と連絡を取り合い、ケアに努めている。知人らによると、家族について「落ち着いた生活を送っているようだ」と話した。

 ヘリは18年2月5日午後4時43分、定期整備後の試験飛行中に民家に墜落した。隊員2人が死亡し、家にいた小学生の女児(当時)がけがをした。(取材班)

事故当時のニュース(2018年2月9日)
このエントリーをはてなブックマークに追加