新型コロナウイルス特別措置法、感染症法の改正案は修正され、当初の政府案にあった入院拒否への懲役刑など刑事罰は行政罰の過料となり3日、成立した。営業時間短縮命令に従わない事業者への過料は減額した。

 犯罪的行為への制裁が本来の罰則だが、過料であれ科されるのは生活や雇用のため営業を続ける事業者や家庭の事情で入院できないコロナ患者らだ。罰則があることで検査を避けたり陽性判明を隠したりし感染を拡大させてしまう逆効果も心配される。政府は効果を検証し必要なら軌道修正をためらうべきではない。

 感染症法は、ハンセン病患者らを隔離し差別や偏見を生んだ歴史を「教訓として生かす」と前文に明記する。これに逆行するように、政府は改正案へ「入院措置を拒んだり入院先から逃亡したりした者は1年以下の懲役か100万円以下の罰金」「保健所の行動歴調査を正当な理由なく拒んだり虚偽回答したりした者は50万円以下の罰金」と刑事罰を盛り込んだ。

 また現行特措法は、私権制限を「必要最小限」と規定し、休業や時短の要請・指示に応じない事業者への罰則を設けていない。これに対し政府は「罰則で強制力を付与し実効的にする」(菅義偉首相)として改正案に緊急事態宣言下と、その前段の「まん延防止等重点措置」下で時短営業命令を拒んだ事業者へそれぞれ50万円以下、30万円以下の過料を設けた。

 「保護すべき感染者や事業者を罰則で威嚇する」(日弁連)と反発が広がり、与党議員の銀座のクラブ深夜訪問、厚生労働省の専門部会で罰則に慎重・反対意見が多数を占めたことが判明し法案は野党要求で大幅修正された。時短営業に応じた事業者らとの公平のため過料はやむを得ない面もあるが、過料も罰則であり本来はない方がいい。

 コロナ禍の日本は感染者や医療従事者への差別、「自粛警察」など同調圧力が顕在化している。入院拒否に罰則を設けることでこの風潮が強まりはしないか。社会防衛第一の感染者排除から人権尊重に転換した感染症法の精神を再確認し、今回の改正により人権侵害が広がらないよう政府は注意を怠るべきではない。

 疑問、懸念はまだある。法律違反の有無や保健所調査を拒む「正当な理由」は誰が確認するのか。刑事罰削除で警察の直接関与は想定されなくなった。既にパンク状態の知事や保健所に、さらに行政罰の調査、執行まで担わせるのは感染対策上、本末転倒ではないか。

 経済的理由で時短営業に応じられない人、家族の介護や育児のため入院できない感染者に協力を求めるには、財政支援、医療体制強化、介護・育児支援で協力しやすい環境を整える方が強制力より有効ではないか。特措法改正案は事業者支援を国や自治体に義務付けたがなお不十分だ。私権制限を強める以上、現状では実施していない損失額に応じた補償が必要との声も根強い。政府は実現可能性を追求すべきだ。

 新設のまん延防止措置には知事の命令権や罰則が規定されたが、実施は行政裁量に委ねられ国会監視も曖昧だ。一定の要件、手続きが必要な緊急事態宣言を発令せずに強制措置が取れ、権力行使に歯止めが効かない恐れもある。危機の中で急いだ法改正はあらが目立つ。施行後も慎重な運用を強く求めたい。(共同通信・古口健二)

このエントリーをはてなブックマークに追加