江戸後期、武雄鍋島家が長崎を通じて購入した蘭学資料などを紹介する企画展「武雄のキセキ 蘭学への挑戦」が武雄市図書館・歴史資料館で開かれている。270余年前の地球儀など国重要文化財111点を含む168点が、進取の気性に富んだ武雄の先進性を彷彿ほうふつさせる。28日まで。
副題は「『長崎方控(かたひかえ)』『當用控(とうようひかえ)』をひもとく」。長崎方控は天保2(1862)年から文久2(1862)年の間に長崎から武雄に持ち込まれた文物が記録された“買い物帳”。この資料の研究が契機となって2014年、2224点の洋学関係資料が国重文に指定された。
企画展は、オルゴール時計や天体観測の機器類など西洋から伝わった文物の展示に始まり、蘭学を積極導入した武雄領28代領主鍋島茂義の紹介、日本で最初に鋳造された西洋式大砲モルチール砲などが並ぶ西洋砲術導入、温室も用いたダリアなどの植物研究のコーナーなどで構成されている。
「長崎方控」は4冊あり、望遠鏡やエレキテルのほか薬品、ガラス瓶、植物など購入した品々や年代が記載されている。武雄の蘭学資料の来歴を明確にする一級品の資料。
オランダのファルク工房で製造された天球儀と地球儀は一対で伝来した珍しい品。天球儀には小熊座やさそり座の星々と共に、ギリシャ神話に登場する人物や動物が描かれている。
赤葡萄(ぶどう)酒瓶は形が微妙に異なることから手作りと分かる。コルク栓がついたままで中には液体が入っており、ワインなら日本最古になる。
そのほか、輸入した種子から育てたダリアなど450余種の植物を描いた「植物図絵」、距離計付きの軍事用望遠鏡、西洋絵画に革命をもたらしたとされるウルトラマリンブルーやプルシアンブルーの顔料など、普段は収蔵庫に眠る逸品が並んでいる。
近藤貴子学芸員は「武雄にこれだけまとまった貴重な資料が残っていることを広く知ってほしい。武雄でパイナップルが栽培されていたことが記された書物などもあるので、当時の様子も身近に感じてもらえれば」と話す。ギャラリートークは11日と20日の午後2時から。(小野靖久)