テイクアウト商品を準備する吉岡さん=東京・六本木の「大吉日和」

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため緊急事態宣言が延長された東京都で、料理店を営む佐賀市出身の男性がいる。吉岡貴(たか)さん(44)は、新型コロナが国内で流行し始める2020年2月、六本木に「大吉日和(だいきちびより)」を開いた。時短営業やランチなど試行錯誤を重ねて1年を切り抜け、ウェブで注文を受ける出前客も増えた。「お会いできる日を楽しみにしています」と感謝の手紙をつづり、まだ会ったことがない常連客と店で顔を合わせる日を心待ちにしている。

 吉岡さんは昭栄中―大濠高卒。上京して音楽関係の仕事に就いて数年後、芸能関係者に誘われ、飲食業界に入った。勤め先の店を店長として切り盛りして16年、閉店を機に独立を決め、和食中心の創作料理店を昨年2月18日にオープンした。店舗の賃貸契約を結んだのは19年11月。全面改装した工事費や調理器具など初期費用は2千万円近い。

 開店当初は、顔見知りで全25席が埋まる日が続いた。上々の滑り出しと思っていたとき、国内で感染が拡大。客は激減した。感染対策で客席は間引きし、午前2時までの営業時間も午後8時までに短縮した。

 昨年4月の最初の緊急事態宣言以降、「まともに営業できたのは通算3カ月」。一時期を除き時短営業が続く。スタッフや仕入れ業者の生活を考えると、休業の選択肢はない。ランチや出前を新しい客と出合う機会と考え、積極的に挑む。それでも年間売り上げは目標の6割。月30万円台の賃料と3人分の人件費や雑費を差し引くと、公的支援がなければ成り立たない。

 業者が仲介する出前では、客ごとの利用回数が分かる。「いつもありがとうございます。お会いできる日を楽しみにしています」。会ったことのない常連客に感謝の手紙を出前に同封している。「人が好きだからこの仕事を続けています。お客さんと話すのが大好きなんですけど、今は最小限。だから手紙を書くのかもしれません」。マスク越しでも分かる笑顔で続ける。「悔しいことはたくさんありますけど、お客さんと顔を合わせるためにも、絶対に生き残ります」

 緊急事態宣言中は行政の指示に従う。現在は午後5時から午後8時(持ち帰りは午後11時)まで。日曜・祝日定休。問い合わせは同店、電話03(6434)0441。(山口貴由)

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