菅義偉首相による内閣や与党に対する統治が効かず、政権内の慢心や緩みが改めて露呈したと指摘せざるを得ない。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため緊急事態宣言を発令中の深夜、与党の幹部が東京・銀座のクラブに出入りしていたことが発覚。更迭された文部科学副大臣を含む自民党衆院議員の3人が離党し、公明党衆院議員は政治資金問題も加わり、議員辞職した。いずれも世論の強い批判で引責に追い込まれた形だ。

 政府は緊急事態宣言の期間を延長した。実効性確保には不自由な生活が強いられる国民の協力継続が欠かせない。「不要不急」としか受け止められない与党議員の深夜会食は、協力の土台となる政治への信頼を失わせる深刻な事態を招いた。

 自民党を離党したのは、元国家公安委員長の松本純氏ら。公明党では幹事長代理だった遠山清彦氏が議員辞職した。

 松本氏は先月18日、文科副大臣を務めていた田野瀬太道氏と衆院議院運営委員会理事だった大塚高司氏と共に銀座で深夜まで飲食した。松本氏は国対委員長代理の職にあり、麻生太郎副総理兼財務相の最側近とされる。

 東京は緊急事態宣言下にあり、政府は午後8時以降の外出自粛を求めている。資金繰りに苦しむ飲食業者の陳情を受けるためだとしても、与党議員なら深夜会食は許されるという「特権意識」はなかったか。その権力は陳情を待つまでもなく、関係業者らへの支援充実に使うべきだ。

 さらに問題なのは、週刊誌報道で発覚後、松本氏が「1人で行った」と虚偽の説明をしていたことだ。松本氏は「前途ある有望な彼ら(田野瀬、大塚両氏)をかばいたいとの思い」があったと釈明したが「身内の論理」であり、国民に対して通用する言い訳ではない。

 「虚偽説明」で想起するのは、安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用負担問題だ。安倍氏は首相在任中、費用補塡ほてんを否定していたが、事実と異なることが明らかになった。疑惑が浮上しても「虚偽」説明で隠蔽(いんぺい)しようとする体質が菅政権内でも垣間見えたと、今回の深夜会食問題では言えるのではないか。

 公明党も猛省しなければならない。遠山氏について深夜会食が分かっても危機感が伝わらない厳重注意にとどめた後で、資金管理団体のキャバクラなどへの支出が判明。幹事長代理を辞任させたが、支持者の反発で議員辞職を受け入れざるを得なかった。

 自民、公明両党もコロナ禍にある国民と謙虚に向き合っていれば、厳格な調査や処分を早々に実行できたはずだ。特に松本氏らの議員辞職を求めなかった自民党の対応には疑問が残り、コロナ対策同様、後手に回った印象は否めない。

 菅首相は昨年12月、宣言下ではなかったとはいえ、自民党の二階俊博幹事長と共に大人数での「ステーキ会食」に参加した。だが、首相は「国民の誤解を招くという意味においては真摯しんしに反省している」と陳謝だけですませた。この姿勢が松本氏らを増長させたとの疑念さえ持ってしまう。

 首相は今回の不祥事について「あってはならないことで極めて遺憾だ。心からおわび申し上げる」と謝罪した。口先だけでないことを示すには、自身の進退をかける覚悟で再発防止を誓うべきだ。(共同通信・鈴木博之)

このエントリーをはてなブックマークに追加