政府は新型コロナウイルスの緊急事態宣言を栃木を除く10都府県で1カ月間延長した。高齢患者、重症者数が高止まりし医療提供体制の逼迫(ひっぱく)が改善していないためだ。感染力が強い変異ウイルスの拡大も懸念されており、政府は「最後のとりで」である医療体制の強化、効率化を早急に進めなければならない。

 宣言が出ていた11都府県の1日までの1週間の新規感染者数は、その前の1週間を「1」とすると、栃木「0・61」、東京「0・73」、岐阜「0・77」、兵庫「0・7」となるなど、全ての地域で前週より減少した。

 厚生労働省の専門家組織は、今冬の第3波の要因とされた20~50代の若年世代の飲食を通じた感染が減少していると状況分析する。飲食店の営業時間短縮など「急所を押さえた対策」が一定程度成果を上げたことは積極評価したいが、なお道半ばだ。収束に向け外出自粛、時短営業、テレワークなどの要請が緩むことがあってはならない。

 一方、重症者や死亡のリスクが高い80、90代など高齢者への感染拡大は止まっていない。若者から感染するとみられる高齢患者らは遅れたタイミングで増えるからだ。この影響で、1日公表データでも栃木、京都を除く9都府県は判断指標の一つ「確保想定病床の使用率」が50%超と「ステージ4」(爆発的感染拡大)のままだ。特に東京など3都県は70%以上で深刻と言わざるを得ない。

 菅義偉首相は1月7日、4都県にまず宣言発令した際に「1カ月後には必ず事態を改善させる」と述べた。成果が出なかった場合について「仮定のことは考えない」とまで言った。その首相が今回「もうひと踏ん張りしてもらい、感染減少を確かにする」として延長した。1カ月で解除できなかった政治的責任は当然ある。対策の不備を早急に検証し、次に生かすことで責任を果たすべきだ。

 政府のコロナ対策分科会が提言した宣言延長後の対策強化も医療関連が多くを占めた。「医療界との連携で病床・医療従事者を確保」「自宅・宿泊療養、待機中の患者への支援」が2本柱だ。特に病床確保についてはコロナ専門病院、回復期の患者の転院を受け入れる後方支援病院、さらには臨時医療施設の整備を国と都道府県に求めた。いずれも従来難航してきた課題だが、宣言解除に向け今こそ進展させたい。

 東京では1日、入院患者2899人に対し、入院・療養先を調整中が3472人だった。病床逼迫を防ぐには、医療体制強化の一方、「入院予備軍」である新規感染者を減らす基本的な感染症対策の徹底に結局は立ち返らざるを得ない。

 その点で首都圏4知事は先に「宣言を延長する場合は、休業要請などより強い措置を検討せざるを得ない」と表明した。「限定的、集中的」(菅首相)として1カ月に絞った飲食店への時短営業要請がさらに強化されて1カ月続くとなれば事業者には死活問題だ。政府は事業者への支援も同時に強化する必要がある。

 政府は、感染状況が「ステージ3」相当まで下がれば宣言を解除するとしている。しかしステージ3とは「感染急増」の状態を指し、収束とは程遠い。分科会が提言の中で指摘するように、宣言が解除できたとしても「ステージ2(感染漸増)」まで対策を続行すべきなのは言うまでもない。(共同通信・古口健二)

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