美術展覧会に出展する作品「追憶(軍艦島)」を描いた冬野健二郎さん。右は100号の原画=小城市小城町

 日光東照宮(栃木県)の国宝指定70周年を記念して7月に現地で開かれる美術展覧会に、小城市の画家・冬野健二郎さん(62)の絵画が展示される。長崎市の端島炭鉱(通称・軍艦島)を題材に描いた5年ほど前の作品で、選考した美術研究家の推薦を受けた。病気や生活苦で絵を描く機会が少なくなっていた冬野さんは「もう一度、筆を握ろうという意欲を呼び覚ましてくれた」と喜びを語る。

 展覧会は7月24日から28日までの5日間、全国から寄せられた絵画や書、彫刻など約300点が客殿と国宝の東西回廊に飾られる。盛期ルネサンス検証の権威とされるイタリアの美術史研究者ら複数の専門家が「平和」や「癒やし」といったテーマに基づき、過去の全国展の出展作品などの中から選んだ。

 冬野さんの作品「追憶(軍艦島)」は、独特の景観を形作るコンクリート製の高層住宅群を明るい色調で表現。周囲約1・2キロの離島に5千人以上が暮らした60年前を思い返し、島の全景に加え、かつて炭鉱で働いた人たちの姿を油絵で力強く描いた。

 これまでに所属団体の展覧会などに出展したが、この作品が入選することはなかった。昨年11月に日光東照宮から推薦の連絡が来た時はにわかに信じられず、「何かの間違いじゃないかと再度、確認するくらい驚いた」(冬野さん)という。

 冬野さんは、21歳で故郷の多久市美術協会に入り、表現力を磨き、感動を与える絵を描くことの大切さを学んだ。「努力に勝るものはない」という先輩の教えを胸に県展などで入選も重ねてきたが、夫婦で働いていた会社が2009年に倒産。生活苦やストレスで4年ほど前に体調を崩してからは、新しい絵をほとんど描いていなかった。

 7月の展覧会は展示スペースが限られるため、約1カ月かけて100号の原画を10分の1ほどの大きさに描き直し、1月下旬に完成した。再びキャンバスと向き合った冬野さんは「周りの人たちも自分のことのように出展を喜んでくれた。大好きな絵を描き続けろと、背中を押してもらえた」。会期中には、公募で選ばれた子どもたちと一緒に国宝の8棟を描く催しに参加する。(谷口大輔)

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