孝子さんの遺影を手に「現役でかなえられなかった日本一の夢をかなえてほしい」と話す義雄さん=鳥栖市の緒方新監督の実家

 プロ野球広島の来季監督に緒方孝市野手総合コーチの就任が決まり、鳥栖市萱方町で魚の卸売業を営む緒方さんの父・義雄さん(79)は「プロ野球選手になるだけでも一握り。それが今度は監督だなんて夢のよう。家内も天国で喜んでいるでしょう」。19年前に亡くなった妻・孝子さんの遺影を手に感慨深げに語った。

 緒方新監督は3人きょうだいの長男。「何か一つ芯を持ち、自分で決めたことは貫く子だった」と義雄さん。高校時代は朝の早い両親が寝静まった夜10時ごろから近くの公園へ出掛け、素振りに汗を流した。非凡な才能を持ちながら、努力を惜しまない姿が当時からあった。

 家業で忙しい父をおもんぱかってか、相談役は母の孝子さんが務めることが多かったという。義雄さんは「野球を始めるということも家内から聞いたぐらい」と笑う。プロ入りか大学進学か悩んだときも、孝子さんが「男なら自分で決めなさい」と背中を押した。

 息子の現役時代、活躍を願って試合のたびに仏壇に手を合わせていた孝子さん。しかし、緒方新監督が一軍レギュラーに定着する目前、52歳の若さで急逝。義雄さんは「実際にプレーを見せられないからこそ、空の上にいる家内に届くように一層野球へ情熱を注いだのでは」。盗塁王、ゴールデングラブ賞など数々のタイトルをたたえる賞状や盾を見つめ、息子の心中を推し量った。

 緒方新監督の現役引退試合には孝子さんの遺影とともに観戦に駆け付けた義雄さん。三塁打を放ち、泥だらけになりながらベースに突っ込んだ息子の全力プレーを見て涙があふれたという。「これからは選手やコーチ時代とは比べものにならない重圧があると思う。しかし、ここまで広島一筋でやってきたのだから、現役でやり残した日本一という夢をかなえ、故郷に錦を飾ってほしい」。鳥栖の地で天国の孝子さんとともに、エールを送り続ける。

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