バイデン米大統領は就任早々、トランプ前大統領が離脱した地球温暖化対策のためのパリ協定に復帰。気候変動対策を米国の外交と国家安全保障政策の柱に据えるとの大統領令などに署名した。

 11月に英国で開かれる国連気候変動枠組み条約の第26回締約国会議(COP26)に向け、米国の新たな温室効果ガス削減目標の検討にも着手。欧州連合(EU)も中国も協定下での2030年の削減目標上積みを表明しており、温暖化対策強化が世界の大きな流れとなるのは確実だ。

 日本は、菅義偉首相が50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「ネットゼロ目標」を掲げはしたものの、そこに至る道筋として重要な30年の削減目標上積みに関する国内の議論には遅れが目立ち、このままでは世界の流れから取り残されることになりかねない。温暖化対策の根本的な改革が急務だ。

 パリ協定は、温室効果ガスの排出を減らし、産業革命以来の平均気温の上昇を2度より十分低くし、1・5度に抑えるよう努力するとの目標を掲げている。

 日本など多くの国が50年の排出ゼロを掲げるのは、それが1・5度目標の実現に不可欠だからだ。だが、目標達成にはそれだけでは不十分で、30年の排出量を10年比で45%程度減らすことが求められる。

 一方で現在、パリ協定の下で各国が表明している削減目標では2度目標の達成さえおぼつかない。COP26までに各国が削減目標の強化を求められているのはこのためだ。既にEU諸国は、30年に1990年比で40%減という目標を55%にすることで合意。英国は68%とさらに野心的だ。

 これに対して「30年度に13年度比で26%減」という現行の日本の目標は1990年比では18%、2010年比では23%程度と大きく見劣りする。

 50年の排出ゼロを実現するためには、現在の経済や社会の姿を根本から変えるための取り組みを今すぐ始めることが必要で、そのためには30年の目標深掘りが欠かせない。だが、経済産業省を中心に始まった目標達成の道筋に関する議論は、それにはほど遠い。

 その典型例が「参考値」として示された、50年に再生可能エネルギーで電力の50~60%を賄うという目標だ。残りは水素利用や二酸化炭素の回収・隔離など、現在は実現の見通しが立っていない新技術や原子力などでカバーするという。

 高額の炭素税のように二酸化炭素の排出に価格をつけることで排出を減らす「カーボンプライシング」の議論も、環境省と経産省が別々に進めることになり、早期に導入される見通しはない。

 今の経済や社会の根本的な変革に取り組むのだという覚悟はまったく感じられない。

 多くの科学者は、今後10年間の取り組みが将来の温暖化の動向を大きく左右し、地球の環境と人類社会の姿を決めると指摘している。

 日本の政策決定者にはそのような認識も危機感も希薄だ。

 既得権益に固執して変化を阻もうとする勢力からの抵抗を排し、社会と経済の大転換を促すための野心的な削減目標と、それを実現するための思い切った政策を導入すること。それこそが今、世界第5位の大排出国である日本のリーダーに求められている。(共同通信・井田徹治)

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