発達障害を巡る佐賀市の秀島敏行市長と神埼市の松本茂幸市長の発言が物議を醸している。公開の会議で、出産後の対応が発達障害の原因とする医師の見解を引き合いに「原因究明されると、子どもは健常者として一生幸せに暮らせる」などと言及したことが疑問視されている。両氏は29日、差別的な意図はなかったとして発言を撤回しない考えを示した。

 秀島氏は26日に佐賀市内で開かれた知事と市町の首長による意見交換の場で、発達障害とその疑いがある佐賀市の小中学生が年々増加しているデータを示し、支援に必要な経費も増えていると報告。予防の必要性にも言及した。

 秀島氏は重要施策として乳幼児から年代に応じた独自の療育事業に取り組んでいることを説明した上で「将来的に少子高齢化でお年寄りを支える側に回れない子どもたちが増えている実態をどうするのか心配な部分がある」と発言した。

 松本氏は出産直後に母親が新生児を胸で抱くカンガルーケアの導入後から発達障害が増えたというある医師の見解を紹介。「絶対(正しい見解)とは言えないが」と前置きしつつ「原因究明され解決すると、子どもは健常者として一生幸せに暮らせるのではないか」と述べた。

 29日、両氏は記者団の取材に応じ、秀島氏は「発達障害の現状から、次の世代を担う支える層が貧弱になる懸念がある。社会構造の話だ」とした。松本氏は「発達障害が一生不幸と言っているわけではないが、誤解を招くような不適切な発言だったと認め、おわびする」と陳謝したが、発言自体は撤回しなかった。

 発達障害支援論が専門の園田貴章佐賀大学名誉教授は「日本LD(学習障害)学会は発達障害とは何かを定義していない。原因を捉えきれていないためだ。市長が紹介した後天的な要因とする説には疑問もあるが、学問研究上の一つの仮説としては成り立つ」とした。発達障害児が高齢者を支える側になれないとする発言は「就労が難しい今の社会構造のままならば、そうした危惧を持たざるを得ない」と語る。その上で「障害のある人も、働いて人の役に立ちたい思いがある。行政に求められているのは社会の側の環境を発達障害の特性に適合させていく配慮だ」とする。(取材班)

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