免疫には、自然免疫と獲得免疫があります。後者は、一度身体に侵入した病原体を記憶し、次に侵入した際に排除するように働く免疫です。その効果を高めるのがワクチン。弱めた病原体を体内に入れることで、抗体を作らせ、いざ感染した際に重症化することを防ぐ働きをします。また、ワクチンには、生ワクチン(毒性を弱めた微生物・ウイルスを使用したワクチン)と不活化ワクチン(ウイルスが体内で増殖する機能を化学的処理などによって無効化させ、毒性をなくしたもの)に分類されます。

 今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンはどういうメカニズムで開発されているのでしょうか? COVID-19には、複数の「突起」があり、この突起がヒトの細胞にくっつき、ウイルスが突起を通じて細胞内に入り込み、感染を引き起こすようです。突起を作るための「設計図」の遺伝子であるメッセンジャーRNAを解読し、これを人工的に作り、ワクチンとしました。つまり、遺伝子情報から「突起」の部分をあらかじめ作成し、それを体内に注射することで、これを「敵」だと認識させる抗体を作成します。次に本物のCOVID-19の突起が来た際に、攻撃する免疫を作らせるという仕組みです。

 ウイルスの専門家の話では、COVID-19やインフルエンザなど呼吸器の病気に対するワクチンが、感染そのものを完全に防ぐのはやや難しいかとの意見もあります。また、人口の7割程度がワクチンを打たないと集団的な免疫効果は十分ではないようで、感染拡大はワクチンだけでは、解決しないのではないかとも危惧されています。

 日本では、COVID-19のワクチン接種は、2月下旬に医療従事者へ開始され、3月下旬に高齢者の接種を目指すといわれています。ただ、ワクチンはあくまで「安全保障の一部」であり、ワクチンが普及しても、当分は「3密」を避け、手洗い、マスク着用は必要でしょう。私はCOVID-19の終焉を祈るメンタルヘルスの医療者にすぎませんが、COVID-19の拡大に伴い現場で戦っている医療者に感謝するとともに、一般の方々の不安や不幸が早く昔話になってほしいと願うばかりです。(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授・副センター長・統括産業医 佐藤武)

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