新型コロナウイルス感染症の大流行を受け地方行政に関連する幾つかの潮流が生まれた。一つは、国と市町村との間にあって存在感が乏しかった都道府県の役割が再評価されたことだ。特に知事の主導力が注目された。

 知事らは昨年から感染拡大防止の最前線に立っている。営業自粛を求められた事業者らと向き合い、休業補償などの支援にもいち早く動いた。コロナ特別措置法の改正も含め対策の現場を抱える知事側の提案が国に採用される例も目立った。

 ある自治体が住民目線で新しい対策を始め、うまくいけば他の自治体も展開。自ら政策を考え実践できる多様な自治体があるからこそ可能になることだ。コロナ対策を通じ地方自治の重要性が再認識されたとも言える。

 地元の新聞やテレビを通じ対策を訴える知事らは、住民には首相より頼もしい存在に映った。コロナ対策を陣頭指揮した各知事を比較しランキングするメディアもあった。北海道、東京都、大阪府の知事らの評価が高く、競争意識をあおった面もあっただろう。

 知事らが進める政策を住民が真剣に受け止め、比較しながら監視、評価するようになった。これをコロナ以外の政策にも広めることができれば、住民と行政の良い緊張関係が生まれる。それを通じて地方自治が活性化することを期待したい。

 一方、緊急事態宣言の再発令の経緯を見ていると、首都圏の知事らが病床の確保や飲食店の時短営業などの対策をどこまで主体的に進めてきたかは疑問だ。ワクチン接種では国の指示を待つのではなく、自治体独自の工夫を重ねてほしい。

 コロナ禍では、一律10万円の給付金支給に時間がかかるなど国と同じくデジタル化の遅れが自治体の課題として浮かび上がった。自治体ごとに少しずつ異なる情報システムの標準化は、相互の連携を容易にしてコストを下げるために不可欠だ。

 政府は通常国会に関連法を提出する。インターネットを通じて、受けられる住民サービスの案内を一人一人に提供する「プッシュ型行政」も次の課題である。行政コストの低減と住民サービスの向上策としてデジタル化を急いでほしい。

 リモートワーク普及に伴い「3密」になりやすい大都市から人口流出が始まっている。人口移動報告によれば、東京都は6カ月連続で転出超過となった。地方では経済界と共同してサテライトオフィスの整備など受け皿をつくる動きもある。

 菅義偉首相は「地方を大切にしたい、日本の全ての地方を元気にしたい」などと就任後初の記者会見で述べたが、コロナ対策に追われ地方創生どころではないだろう。自治体は移住してくるIT専門家らさまざまな人材を生かし、経済振興につなげることも考えたい。

 コロナ禍は観光や飲食など感染症の影響を受けやすい産業を直撃した。今後は感染症だけでなく、巨大地震や大型台風などの発生も予想される。こういった災厄の後、どのように地域の経済を早期に立ち直らせるのか、新しい産業をどう育てるのかなど、地域の持続可能性を高める計画を事前に練っておくべきだ。

 自治体が主導して「新次元の分散型国土」(全国知事会)を形づくるチャンスである。知事にはコロナ対策と合わせて、もっと戦略的に取り組むよう提案する。(共同通信・諏訪雄三)

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