作家の藤沢周平さん(1927~97年)はミステリー好きだった。ハラハラドキドキの連続で楽しませてくれる小説を読んでいるとき、原稿の締め切りが引っかかってくると実に当惑する。原稿が遅れた理由をサスペンス小説のせいにはできないから、とエッセーに書いている◆ミステリー好きの筆者も高校時代、テスト前に限ってついついページを開いた。つかの間の現実逃避が勉強不足と睡眠不足を招いて後悔しきり◆ある日、アガサ・クリスティの作品を買った。数日後、読もうと思ったら、先に読んだ姉が「面白かった。あれが犯人とはね」と、まさかの一言。謎解きが面白いのにネタバレでは…。それでも伏線が分かり、別の意味で面白く読めた◆ミステリーといえば1981年冬、県北西部の漁港で1台の車が転落した「替え玉殺人事件」を思い出す。北九州の男性が自らに掛けた生命保険金をだまし取ろうと妻や愛人と共謀、無関係の第三者を被害者に仕立てた。だが、筋書き通りにはいかない。妻の自供で真相が発覚、男性は捕まる前に鉄道に身を投げた。40年前のきょう1月29日付本紙は「被害者は別人だった」の見出しで1面トップで報じた◆驚いたのでよく覚えているが、そんな凶行は起きてほしくない。これとは別のハラハラドキドキを求め、今夜もたぶんページを開く。(義)

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