先日、お年玉が当たっていないかと年賀状を見返した。その中に自作の短歌を書いた旧友の賀状が一通。「ともに観(み)てともに信じてともに為(な)すともに学ぶはともに生きるなり」。巧拙はさておき、コロナ禍の今、「共に」の連呼に思いがこもる◆臨床心理士の東畑開人(とうはた・かいと)さんが、週刊誌に「紙」の効用をテーマにこんな趣旨のことを書いていた。「紙とネットは共に乗り物。両方とも心をどこかへと運ぶことができる。ただネットに乗りやすいのは信念や明確に言いたいことなど心の硬い部分」◆これに対し、「心の柔らかい部分は紙の方がいい。何を言いたいのか分からないけれど、それでも何かを伝えたいと思っているならば、その複雑で多義的な言葉たちはゆっくり運ばれたくらいがちょうどいい」とし、「心には情報以上のものが詰まっている。そのニュアンスは壊れやすく失われやすいが、紙がその柔らかい部分をふんわりと包んでくれる」と記す◆思いや情報は表現されて初めて形になり、質量を増やすためには卵からひながかえるように温める時間が必要だ。いただいた賀状にも、友の歌のように、ふんわりと包まれた言葉が乗っていた◆今年は日本の郵便事業開始から150年。ネットも「紙」も大事にし、上手に使い分けたい。ちなみに、お年玉は3等が7枚も。やはり温かい。(義)

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