世界で最初に新型コロナウイルス感染症の発生が確認された中国武漢市の都市封鎖から23日で1年。今なお各国で感染拡大の勢いは強く、世界の感染者数は約1億人に迫り、死者数は200万人を超えた。

 強権発動でコロナを基本的に抑え込んだ中国の習近平国家主席は新年のあいさつで「コロナの影響を克服し、防疫と経済発展で重大な成果を得た」と自賛。国産ワクチンを発展途上国などに提供して国際社会で影響力の拡大を図る。

 世界保健機関(WHO)の独立委員会はコロナ対策を検証した中間報告で、中国の初期対応の遅れを指摘した。中国は報告を謙虚に受け止め、感染対策を再点検して情報を公開、世界の感染対策にも積極的に協力し、国際責任を果たすべきだ。

 武漢市当局は一昨年末にウイルス性肺炎の発生を初公表したが、習氏がコロナ制圧へ大号令をかけたのは昨年1月20日で、武漢封鎖はその3日後。対応の遅れは市当局が政府への詳細な報告を遅らせたり、隠したりしたためとみられる。

 昨年1月の春節(旧正月)、中国政府は国民の海外への団体旅行を禁止したが、個人旅行は容認した。このため中国から世界へコロナが広がった可能性も大きい。

 独立委の中間報告は「中国の保健当局は昨年1月、より強力な公衆衛生上の措置を取ることができたはずだ」と指摘した。中国外務省は「早期の発見、隔離、治療により、世界の対策のために時間を稼いだ」と反論したが、国際社会の理解は得られまい。

 WHOは昨年1月22日に初の緊急委員会を開催したが、緊急事態宣言を出したのは30日。中間報告は宣言が遅れた「理由が不明」とも指摘。WHOのテドロス事務局長は宣言前に訪中した際、習氏から慎重な対応を求められており、武漢封鎖など必要な措置を取るまで中国に時間的な猶予を与えた疑念は拭えない。

 さらにWHOによるパンデミック(世界的大流行)の表明は3月11日までずれこんだ。中国寄りとされるWHOは中立性を欠いた不合理な対応がなかったか、真摯(しんし)に自省する必要があろう。

 中間報告は「コロナを巡る米中対立」「多数の国が警告を無視」「WHOの権限不足」などの問題点も列挙した。5月の最終報告までにさらに深く検証すべきだ。

 今も河北省石家荘市などで都市封鎖が続くが、中国は外出や移動など国民の行動を徹底的に制限し、感染拡大を封じ込めた。感染者数は約9万8千人、死者は約4800人と日本より少ない。

 ただ、強引な手法には市民の不満も根強い。地元作家の方方さんはインターネットで公開した「武漢日記」で当局の情報隠蔽(いんぺい)や強権的手法を批判。元弁護士で記者の張展さんは「市民の行動や自由を制限するのは違法」と考えネットで主張し、公共秩序騒乱罪で懲役4年の実刑判決を受けた。

 「中国ウイルス」と呼んで対応を批判する米国に対し、中国は「発生源は武漢とは限らない」と反発してきたが、説得力に乏しく、強弁にしか聞こえない。今月中旬、WHOの国際調査団が武漢入りした。今後、中国側の専門家と合同でウイルスの起源や感染拡大の経緯を検証する。中国は調査に全面的に協力して、包み隠さず真相を明らかにするべきだ。(共同通信・森保裕)

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