むかしから「猫にマタタビ」というが、うちの猫に与えても、どういうわけか知らん顔をしている。誰にも好き嫌いはあるものである。ただちょっと、気になるニュースを見かけた◆猫が寝っ転がって愛おしげに体をこすりつけるマタタビには、蚊を寄せつけないネぺタラクトールという物質が含まれる。茂みに隠れて獲物を狙う猫にとって「虫よけ薬」のようなものだと、岩手大などの研究グループが解明したという。どおりで、いつも家の中にいて食うに困らないわが愛猫には興味がわかないわけである◆安穏と日々を過ごして、世界の厳しさを忘れてしまう。それは動物ばかりではないだろう。きのう核兵器禁止条約が発効した。国連採択から3年半、被爆者が訴え続けた願いがようやく実を結んだ。しかし、菅首相は「条約に署名する考えはない」と、これまで通りの国会答弁を繰り返した。米国の「核の傘」に守られ、核廃絶など関心の外のように見える◆核の脅威を身近に知りながら、安穏と日々を送ってきたのは国民も同じである。「おい、橋渡しはどうなった?」。国際社会の問いかけに、もう知らん顔はできない◆長崎で被爆した歌人、竹山広さんに印象深い一首がある。〈地上最後の核一発を廃棄せむ日に生き会へよわが三人子は〉。そんな未来を現実にする始まりの日である。(桑)

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