日本最初の衆院選は明治23(1890)年7月に実施された。定数は300。選挙権は国税15円以上を納める25歳以上の男子、被選挙権は15円以上納税の30歳以上男子で、有権者は総人口の1%にすぎず、しかも投票用紙に自分の氏名を記す記名投票だった◆当時、国会議員の歳費は800円。これに対し、選挙にかかった費用は平均2千円。しかも、選挙民を集めての「飲ませ食わせ、それにつかませ」だったという(『日本国会事始(ことはじめ)』)。憲法制定から国会創設という未経験の事情を考慮してもお粗末に映るが、それを笑えるだろうか◆一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る買収事件で公選法違反の罪に問われた参院議員河井案里(かわい・あんり)被告(47)に対し、東京地裁はきのう21日、懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を下した◆地元県議らに渡した現金の趣旨が争点だったが、司法は票の取りまとめの依頼にとれると判断した。渡す側が陣中見舞いやお祝い金のつもりだったとしても、受け取る側はそう思わない。お金で人の心は買えないという意味でもあろう◆今年は任期が切れる秋までに、49回目となる衆院選が実施される。初の国政選から130年を経て、さまざまな制限はなくなったが、理想の選挙に近づけないのはなぜだろう。有権者の一人として、その理由と1票の意味を今から考えていきたい。(義)

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