阪神大震災から生まれた歌がある。♪傷ついた神戸を もとの姿にもどそう…。被災地の子どもたちが、願いを込めて歌い継いできた合唱曲「しあわせ運べるように」。26年目の鎮魂の日にも、うたごえは響いた◆作詞作曲したのは小学校の音楽教諭、臼井真さん(60)。自身も自宅が全壊し、変わり果てた神戸の街を目の当たりにしたとき、歌が浮かんだ。その場で紙切れに書きとめ、10分ほどで一気にでき上ったという◆♪地震にも 負けない 強い心をもって/亡くなった方々のぶんも 毎日を 大切に 生きてゆこう…。震災からひと月後、避難所になっていた勤務先の小学校で、子どもたちが初めて声を合わせた歌は、復興への希望をともした◆やがて東日本大震災をはじめ、国内外の被災地にも広がり、「神戸」をそれぞれの地名に変えて人びとを励ましてきた。あの日から四半世紀が過ぎ、震災を知らない世代なのに、歌いながら涙を流す子がたくさんいる。記憶をつなぐ歌はきのうから、神戸市のもうひとつの「市歌」になった◆この春、定年を迎える臼井さんは「全国にもっと歌を広めたい」と第2の人生を踏み出す。地震のように目に見える痛手はなくとも、コロナ禍の社会もほころび、傷ついている。♪もとの姿にもどそう…マスクを外して歌う子どもたちを思い描いてみる。(桑)

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