米国映画「アイアンマン」の主人公は、武器製造会社の社長。彼は紛争地域で自社の武器が横流しされ、目の前で人命を奪ったことから軍需産業からの撤退を決意する◆戦争が生み出す軍需はさまざまなものがあり、それによって潤う産業があるのも事実。だが、武器がどんなふうに人を傷つけ、命を奪うのか、実際に見た人は少ないだろう◆1991年のきょう1月17日、中東で「湾岸戦争」が始まった。その前年、イラク軍がクウェートに侵攻。これに対し、米国の呼び掛けで多国籍軍が結成され、この日に攻撃が始まった。コンピューターゲームのように夜空をミサイルが飛ぶ。そのテレビ映像に戦争の現実感は乏しかった。しかし、画面に映らないだけで、多くの命が奪われていただろう◆当時、「お金だけ出せばいいのか」と、日本の国際貢献の在り方が議論になった。「平和ぼけ」という言葉が使われ始めたのもこの頃だったと記憶する◆人類は戦争の歴史を繰り返してきた。対立が憎悪を生み、悲しみが報復の連鎖を生む。イラクの侵攻は当然許されないが、「正義」をかざせば武力で対抗していいのかという疑問は、30年たった今も消えない。戦地で傷つくのは兵士や何の罪もない市民。アイアンマンのように、実際に体験しないと武力の愚かさに気づかないようでは悲しい。(義)

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