国民生活が新型コロナウイルスの感染まん延で転換期を迎えている中、通常国会が18日に召集される。

 政府、与党は安倍前政権時から指摘されてきた国会軽視の姿勢を改め、今こそ山積する課題について説明責任を果たさなくてはならない。先頭に立つべきは菅義偉首相だ。そうでなければ、コロナ禍にある国民の心に訴えは響かず、理解と協力を得るのは難しい。

 衆院議員は10月21日に任期満了になる。衆院選に向け野党も政権担当能力を示す説得力ある質疑を展開してほしい。

 政府は一般会計総額が過去最大の106兆6097億円となる2021年度予算案と20年度の第3次補正予算案を国会に提出。菅首相の施政方針演説など政府4演説が行われ、論戦がスタートする。 

 コロナ感染拡大への対処が喫緊のテーマだ。政府は東京や大阪などの計11都府県に対し、2回に分けて緊急事態宣言を再発令した。首相は記者会見で「1カ月後には必ず事態を改善させるため全力を尽くす」と言明したが、宣言の対象や期間、効果に対し疑問や不安の声は根強い。共同通信の電話世論調査では政府対応を「評価しない」が70%近くに上っている。

 政府が発令方針を報告した衆参両院の議院運営委員会に菅首相は出席しなかった。記者会見はしたが、事務方が「次の日程がある」として途中で打ち切っている。

 野党から「多くの国はリーダーが先頭に立って国民に呼び掛けている。首相にはリーダーとしての自覚がない」(枝野幸男立憲民主党代表)と批判を受けてもやむを得ない。宣言の効力を高めるため、コロナ特別措置法改正案と感染症改正案に罰則規定を入れる以上、適用条件などについて詳細な説明が必要だ。

 補正予算案には観光支援事業「Go To トラベル」の費用1兆円超を盛り込んだ。停止された事業の予算額として妥当なのか。事業を主導した菅首相から納得いく答弁を聞きたい。

 21年度予算案では、防衛費として過去最高の5兆3422億円が計上された。計画を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策になるイージス艦2隻の導入調査費のほか、敵基地攻撃への転用懸念がある「スタンド・オフ・ミサイル」の開発経費が含まれる。

 日本の安全保障政策の変更につながりかねない上、コロナ禍で苦しむ中小零細事業者や非正規雇用の労働者らへの支援拡充が求められる中、防衛費の在り方について徹底した議論が望まれる。

 コロナ対策の論議が中心になるのは当然だが、国会の会期は6月16日まで150日間ある。米国では今月20日にバイデン大統領が就任する。日本の外交に影響力を持つ米新政権とどのように向き合うのか。唯一の戦争被爆国として22日に発効する核兵器禁止条約に背を向けたままでいいのか。対外政策でも菅政権の真価が表れる国会になる。

 一方で、安倍晋三前首相側が「桜を見る会」前日の夕食会費用を補塡(ほてん)していた問題や吉川貴盛元農相の現金受領疑惑についても政治的、道義的責任を問い続けなければならない。まずは政府、与党が政治不信の払拭(ふっしょく)に努めることが、安倍氏の「虚偽答弁」により失墜した国会の権威回復には不可欠だろう。(共同通信・鈴木博之)

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