昔のことですが、ママを元気にするバランスボール・エクササイズの託児を引き受けました。1人で3人の赤ちゃんを小部屋で2時間預かりました。お座りもハイハイもできない赤ちゃんたちを甘く見ていました。30分過ぎたころ、1人の赤ちゃんが泣き始めました。ガラガラであやしていると、もう1人がつられて泣き出す始末。両脇に2人を抱きかかえ部屋の中を動き回りながら、最後の1人に視線を移すと今にも涙がこぼれそう。まもなく“ギャン泣き”の大合唱です。おっぱいも、おむつも、室温も大丈夫。童謡を歌っても、あやしても、何をしても泣き止まない。まもなく軽やかな足音と楽しげな声が近付いて来ました。私はと言えば、汗だくで髪も乱れ1時間半がどれほど長かったことか。託児室のドアが開きママの笑顔が現れると、赤ちゃんたちは何事もなかったように笑顔になっていました。

 生後2日から3日の赤ちゃんでも他の赤ちゃんの泣きに反応し、つられ泣き、もらい泣きする様子が多々見られます。これを情動(じょうどう)感染と言います。人間関係に必要な共感の原型です。情動には恐怖、驚き、怒り、悲しみ、恐れ、喜びの感情があります。ネガティブな感情は、ポジティブな感情よりも何倍もの影響があります。つまり楽しい笑い声よりも悲しい泣き声の方が圧倒的に伝染しやすいのです。

 今回の集団ギャン泣きは、赤ちゃんが泣きやすい時期の1コマで、誰があやしても泣き止まなかったかもしれません。しかし、赤ちゃんが他の赤ちゃんに共感して泣いたこと、集団ギャン泣きを笑顔に変えたのはママの笑顔だったことは確かです。赤ちゃんはママを頼りにしています。自分を信じましょう。初めての育児には不安がつきものです。辛いことは誰かに聞いてもらいましょう。その後で嬉しかったこと、楽しかったことを言葉にしましょう。たまには子どもを預けてリフレッシュしましょう。親の笑顔は赤ちゃんに伝染します。もちろんその逆も。(佐賀大学教育研究院医学域医学系=母性看護・助産学領域=教授 佐藤珠美)一般社団法人ヘルスサポーターズイノベーション https://www.healthsupporters-i.com/

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