佐賀県内でも近年、スタートアップという言葉をよく耳にするようになった。ベンチャーと同じく創業間もない企業を指すが、新たなビジネスモデルに果敢に挑戦し、2~3年といった短期間で市場環境を劇的に変える可能性を秘めた企業をそう呼んでいる。地方にもぜひとも欲しい新たな力であり、県や金融機関はそうした企業の将来性を見つめ、重点支援にさらに力を注いでほしい。

 「行政は公平が基本。もちろん全てに門戸を開くが、やる気や将来性のある人を重点的かつ継続的に支援したい」。県産業政策課DX・スタートアップ推進室の北村和人室長は、昨年度から始めた支援事業「スタートアップ・ゲートウェイサガ」の狙いをこう語る。

 ICT(情報通信技術)の発達などを背景に短期間で目覚ましい成長を遂げる企業は少なくない。国内のスタートアップとしては、フリーマーケットアプリの「メルカリ」などが代表格に挙げられる。もちろん創業者のアイデアが秀逸で情熱を燃やしたからこその結果だろうが、そのスタートにおいては実際に世の中に通用するかどうかの検証も必要だったはずだ。投資家、支援者らの存在も事業展開のスピードを大きく左右する。

 県の創業支援強化はこうした現状を考慮したものである。その時、その時のスポット的な支援だけでは先は見通しにくい。一定期間にわたり、付きっきりでビジネスプランの磨き上げや出資者、事業パートナーの紹介など多面的にサポートする。東京など都市圏には投資家らも多く、行政が行わずとも民間にスタートアップ育成の素地があるが、やはり地方では軌道に乗せるまでが難しい。一方で、地方だからこそ応援のしがいがあるとの思いも強いようだ。

 事業の根本にあるのは選択と集中である。ビジネスプランコンテストで上位入賞した企業など年間5社程度に絞って支援している。ベンチャーキャピタル(VC)がスタートアップに投資した際、出資額の10%を活動支援金としてVCに支給したり、スタートアップが提供するサービスを県内企業が使う場合、300万円を上限に県が負担したりするなど幅広い支援メニューも整えている。

 とはいえ、企業経営者にとってこの一年は本当に大変だったと思う。新型コロナウイルスの感染拡大で経営環境は大企業でも厳しく、創業間もないスタートアップにしてみれば、なおさらだったことだろう。業界に流入する投資マネーが細ることで企業の優劣が鮮明化し、大淘汰の時代を迎えると指摘する専門家もいる。

 ただ、こうした環境下で地方ならではのメリットも考えられる。北村室長は「都市部では高い家賃を稼ぐため、やりたい仕事以外をやることもあると思う。地方であれば、腰を据えてやりたい事業に専念できる」と語る。

 比較的短期間で著しい成長を遂げた佐賀発の企業としては、ソフトウエア開発のオプティム(本店・佐賀市)などの名前がよく挙げられる。アイデアが確かであれば、地方からでも十分通用することを示してくれている。コロナ禍で変革を求められている今だからこそ好機と受け止めることもできよう。県内から全国に通用するスタートアップが生まれ、成長することを期待したい。(杉原孝幸)

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