県立美術館で開催中の「MINIATURE LIFE展2020」。ブラシの畑で働く人々、空に浮かぶクロワッサン…日用品や食べ物など、身近なものを別のものに“見立て”ることで独自の世界を作りあげるミニチュア写真家・田中達也さんに迫ります。

“見立て”の視点で 日常の中に楽しみ

 

一日一作品を10年

 
 
 

 小さな頃からプラモデル作りが好きだったという田中さん。広告業界で働きながら、趣味で始めたインスタグラムのために、持っていたミニチュア人形を使った作品を撮り始めたことが、現在の“見立て”の作風への第一歩だったといいます。2011年の4月からは作品を毎日投稿。1年ほど続けるつもりが、「写真集を出したい」「個展をやりたい」と次々と目標ができ、今年の4月で10周年を迎えます。インスタグラムのフォロワー数は現在270万人ほど。うち7割は海外と、その人気は世界規模となっています。

 

メモから生まれる独自の発想

©Tatsuya Tanaka ブロッコリーを木に見立てた作品 「ブロッコリー1本分のサバンナ」
 

 作品のアイデアは、普段の生活の中から生まれることが多いとか。「日用品がずらりと並ぶコンビニやスーパーで思いつくことが多いですね」。アイデアは頭の中にはストックせず、すぐにスマートフォンにメモをするという田中さん。全部を書き出し頭の中を空っぽにすることで、また新しい発想が生まれるのだそう。メモは基本的に一行。それが現在は1000行分あるというから驚きです。ただ、その中から実際に作品になるのは3つのうち1つほど。「思いついてすぐに作品にはしません。最初に出るアイデアは誰もが思いつくもの。同じモチーフで何周もすると、他の人が考えつかないような域にたどり着いたりするんです」。見立てを表現する上で大切にしているのは、モチーフが“誰にでも分かるもの”であること。 元になるものが分からないと見立てが成立しないので、変わったデザインやかたちのものは使わないようにしています。こだわりは作品のタイトルにも。コッペパンの電車は「新パン線」、果物の気球は「荷重(かじゅう)100%」、クスリと笑える“言葉の見立て”にも注目です。
 田中さんが作品を通して伝えたいのは、視点を変えれば、何気ない日常の中にも楽しさを見つけられるということ。「今回の展示では、“STAY SAFE”という新しいコーナーを作ったんです。マスクをテントや波に見立てたり、ソーシャルディスタンスを取る人々を音符に見立てたり。制約が多い日々ですが、そんな時間も楽しく過ごしてもらえたら」。田中さんが作る小さな世界に足を踏み入れれば、私たちの日常がより楽しく、豊かになるヒントが見つかるかもしれません。

profile

 

たなか・たつや  ■1981年熊本県生まれ。2011年からミニチュアの見立てアートをSNSに投稿。国内外で注目を集める。NHKの朝の連続テレビ小説「ひよっこ」のタイトルバックも手がけた。鹿児島県在住。

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「MINIATURE LIFE展2020」
開催中~1月30日(土)
[住]佐賀県立美術館
[時]9:30-18:00(最終入場17:30)
[休]月曜休館
[料]一般1250円、中高生1000円、小学生500円
 

 

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