2021年松の内。東京都内某所で唐津焼好きの師弟コンビ、勝見充男さんと村多正俊さんが語り合いました。今年最初の「サカズキノ國」は古唐津、現代陶唐津焼の「新たな楽しみ方」談義でスタートです。

 

勝見:もう連載16回目なんだ。すごい!あっ、そうそう、村多君、明けましておめでとう。

村多:師匠、おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

古唐津の新たな楽しみ方について対談した勝見充男さん(左)と村多正俊さん=都内

 

 2020年振り返り  

村多:2020年、勝見さんはどんな年でしたか?

勝見:やっぱりコロナに翻弄された年だった。行動も制限されてね…。

村多:そうですよね。行きたいところに行けなくなった…一方、テレワークが当たり前になって、家にいる時間が長くなりましたよね。必然、家にあるもの…そう、器に対する意識が高くなったように感じます。

勝見:確かに!丁寧な生活、みたいなものが根付いた。家事にひと工夫なり、ひと過程増やすということで家での過ごし方を有意義にしよう、ってことだろうね。

村多:はい、生活を豊かにしよう、と。なんせ、当たり前のことがそうじゃなくなりましたから。県をまたいでの移動もできない時期もありましたね。そうそう、勝見さん、ステイホーム、ということで必然酒量が、というか家呑みが増えましたよね。Zoom呑みとかも一時期流行りました。

勝見:Zoom、あれね、途中で頻繁に席を立つ人がいてしらけちゃうんだよね。それとね、対面じゃないから相槌とかタイミングがうまくつかめなくて。そんなことが続いたから嫌になっちゃった(笑)。それでね、村多君。普段使い用として買っていた器を頻繁に使うようになった、って言ってたけど、それってどういうこと?

村多:あっ、それは一つの気づきがありまして。骨董が好きな人は何かしら自分に理由付けをしてモノを買いますよね。「ああ、これはお刺し身の醤油用に」とか。でも実際は普段使いに古いものってなかなか使わないもんで。少なくとも僕はこれまで古唐津の小皿とか使わなかったんですよ。けれどもコロナ禍にあって、朝食用のジャムやオリーブオイルをそんな小皿に移して使うようになりました。勝見さんがいう、ひと過程を加えること、しかも古いものを使うことによって気持ちが豊かになる、ってことに気付いたんです。初期伊万里とか、李朝とかが今、フル稼働しています。味をつけよう!なんて気負いがないせいか、逆にいい味がついてきたり。

勝見:マーマレードなんか良い味が付きそうだね~。

村多:ハイ(笑)、そんなこんなで心のバランスをとってますね。なんせテレワークで1週間に1回ぐらいしかオフィスに行ってませんし。第一、人に会わないんですよ。

日々の器

勝見:そうそう僕もね、三島の武骨な碗を買ったんだけど、昼食はそれでよくラーメンを食べていたんだ。そしたらものすごいいい味が付いたよ。それはよいとして(笑)。僕は盃で煎茶を飲んでいたね。骨董屋以外にも物書きもしているから、よく原稿書きの際にお茶を飲むんだ。それでポットにお茶をいれて、それを振りの大きな盃で飲む。

村多:ああ、それ盃の、見立て煎茶碗!

勝見:そうなんだよね。昼間っからお酒飲んではいられないからね(笑)。今日はこれを使おう、明日はあれ、みたいな。そんなことに楽しみを見出していたね。奥に仕舞っていたものなんかもそんな感じで使ってみると「あれ、いいじゃん」ってな感じで、その価値を再認識したりね。

村多:それと…器で言うと華美なもの、色絵とか、そういったものを使わなくなりました。

勝見:こういうときは唐津みたいな、じっくり付き合える器はぴったりだよね。

村多:「じんわりくる」ってのが唐津の魅力。改めて良さに気づきました。

勝見:そこで、古唐津の魅力についてなんだけど。ファンは多いんだけど、「その魅力は?」って問いただすと明確な返答が得られない、ってのがほとんどなんだよね。なかなかどうして言葉にしづらいんだよ。僕はそんなときに一言「唐津は、そう、古唐津は飽きない焼き物だから」と言っているんだ。飽きないんだよ、ほんと。

村多:これだけ家にいると飽きないのが一番です!古唐津はまさに座辺の骨董、ですね。初期伊万里や李朝も飽きません。そうそう勝見さん、僕はそんなものを目指して作陶をしている作家さんの器も良く使っています。じんわりいいのが多いんです。

勝見:ツボを押さえていて表現している作家さんが多いしね。

村多:僕の場合、佐賀の作家さんの器を使っているとその先にある佐賀の風景が想い起こされて、それも作家さんたちの器を頻繁に使う理由の一つになっていますね。

勝見:2020年は一言で括ると…やっぱり骨董が好きなんだな、古唐津が好きなんだな、と思った1年だったね。人とも会えない時期、インターネットでよいものに出会えるとワクワクした。今年はそのワクワクを倍増したいね。

 

 2021年は閑居の時代?貧数奇!? 

勝見:2021年は「閑居を楽しむ時代」ってのはどうかな。

村多:閑居、ですか?

勝見:世俗を離れて、田舎に引きこもる、みたいな意味に使われるけれども僕の言うのはポジティヴな意味での閑居。

村多:質素でありながら日々の道具や所作の隅々にまで意識を行き届かせて生活する感じ、とでも理解していいですか?

勝見:そう、その感じ。2021年はそんな感じなのかも。

村多:まだまだこの先、コロナには付き合っていくことになりそうですしね。

勝見:骨董で言えば、貧数奇(ビンスキ)、って意識かな。貧数奇の美意識ってのは、どこぞのステーキがうまいってんじゃなくて、日本一の沢庵や豆腐が食べたい、ってことだね。2021年はそういう感じ。「ピンのキリ、よりもキリのピン」。今は杉の机にキリのピンの小皿。そこに日本一の豆腐で酒を呑む、ってのが僕には新しく思えるんだ。

村多:それ、いいじゃないですか。

勝見:村多君は今年はどんな感じ?

村多:僕は脳内トリップ連発、ですね。遠出できませんから。佐賀のお取り寄せで彼の地を想う感じです。僕の独酌に欠かない有明海の塩のりとか。もちろんお酒も佐賀のお酒です。

勝見:あっ、僕は松浦漬好きでね。佐賀のお酒との相性がいいんだよなぁ。あれは最高だよ。

村多:器は古いものと唐津や有田、伊万里の作家さんのものを掛け合わせて楽しみます。

 

 2021年は「小さいもの」が来る? 

村多:そういえば、勝見さん、小さいものとか、かわいいものがキーワード、とか。

勝見:うん、ラブリーとかな感じじゃなくて、ちびたもの、のイメージでね。ほら、鉛筆の短くなっちゃった感じ、まだまだ書けますよ、けれども短いよね~って。あれが僕にとってのかわいい、なんだ。ワビ・サビ・チビという感じ。独酌の徳利も1合ちょい切るぐらいのが好き。この徳利とか、まさにそれ。

勝見さんと酒器 無地唐津徳利(江戸初期 平戸系 牛石窯)、李朝明器(李朝時代)、ガラス盃(バカラ 1930年代)
無地唐津徳利

古唐津もそうだけど、今の作家さんのぐい吞みでかいんだよね。そんな中、小さい古唐津の盃とかを見つけてくるのが楽しいんだ。小さいもので造作でしっかりしているもの…明器(李朝の副葬品)とかも好きかな。例えば小さな古唐津の徳利に明器を合わせたりするのが良いんだよね。こんな感じとか。

村多:小さい、というと僕の徳利の最小がこれ。1合2勺ぐらいの容量。これに古唐津の小さい盃を合わせると…ああ、確かに良い感じかも。

李朝堅手徳利(李朝時代)、黒唐津碗形盃(江戸初期・武雄系 李祥古場)、無地唐津盃(江戸初期・平戸系 小森谷)

 

勝見:けれどね、村多君。これでも僕にはまだまだ大きいほう。僕はね、独酌は1日3合と決めているんだ。1合徳利を3回おかわり、ね。けれどお茶席のお預け徳利じゃないけれどでかい徳利1回でおしまい、ってのはまたもう一回おかわりしたくなっちゃうからダメでね(笑)。

村多:徳利とか盃の意識として小さいものを楽しむ、のはいいなぁ、と。小さいものを掌(たなごころ)で愛でる、というか。そうやっていると骨董っていいなぁ、と。

勝見:こんなに長いことやっているのにまだ好きだもんね。それにしても今年は古唐津はあんまり買わなかったなぁ。

村多:僕は古唐津は1点のみ、でした。あとはネットオークションで初期伊万里とか、李朝とか。そう、唐津や有田の作家さんの器を多く買いましたね。山本亮平さん、矢野直人さん、土屋由紀子さんの作品とか。最近はさらに下の世代の作家さんたちの作品に注目しています。石井義久さんとか。古いものをちゃんと理解し、新たな世界観を構築している作家さんが気になります。

 

 まとめ 

村多:骨董とか器とか好きだと、いいですよね。家の楽しみも増えて、生活が豊かになります。

勝見:そうだね、ある意味、逃げ場を作るというか、ゆとりを持つというか。酒を呑むこと自体もね。

やっぱり自分の好きな酒器で呑む、それは楽しい。それを古唐津やら贔屓(ひいき)にしている佐賀の作家さんの器で…すごく良いこと。

村多:コロナ禍は続きそうです。前向きに家での時間をどう楽しみに変えていくか…そういうことで言うと古唐津やら、それらを目指し創造している作陶家たちの器で生活を豊かにしていく、ってのは心のバランスをとる上でも大切なことだ、と再確認です。閑居、小さなもの、ビンスキなんてキーワードも飛び出しました。そのあたりも意識しながら、今年も古唐津の盃について綴っていきたいと思います。みなさん、連載「サカズキノ國」を2021年もご贔屓に!

(写真・構成:村多正俊)

 


 

かつみ・みつお 1958年、東京・新橋で古美術商を営む家に生まれる。10代から西洋骨董に目覚め、大学卒業後、10年間、西洋骨董店で修業。その後、古美術「自在屋」4代目を継承。東京・渋谷区の自宅に店を構える。著書に『骨董自在ナリ』(筑摩書房)など多数。

 

 

むらた・まさとし 1966年、東京都町田市生まれ。ポニーキャニオン・エリアアライアンス部長として、地域活性化事業をプロデュース。古唐津研究交流会所属。世田谷区在住。

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